日曜インタビュー

踏み絵踏む弱さと強さ

映画「沈黙−サイレンス−」
出演 窪塚 洋介
2017年1月22日

キチジローをイノセントに

「あの時代のキチジローを演じられてよかった」と話す窪塚洋介=兵庫県西宮市の関西学院大学
窪塚洋介(右)とアンドリュー・ガーフィールド=(C)2017「沈黙―サイレンス―」製作委員会

 窪塚洋介ら日本人の俳優が多数出演したアメリカ映画「沈黙−サイレンス−」(KADOKAWA配給、マーティン・スコセッシ監督)が大阪ステーションシティシネマほかで上映されている。窪塚は主人公に絡むキチジローの役で「踏み絵を踏む弱さと強さを、イノセントに演じることで理解した」と撮影を振り返った。

■スコセッシ映画

 −アメリカ映画に出演するきっかけは?

 遠藤周作さんの原作「沈黙」をスコセッシ監督が作るというニュースと同時に日本人俳優を募集することを知り、スコセッシファンとして参加したいと思った。オーディションに応募したのは7年前。スタッフの事務所に初めて行った時、待合室でたばこを吸っていたら怒られて「まずい」と思ったが、何とかビデオオーディションに参加できることになって、その3回目にスコセッシ監督に会った。

 −どんな感じの人だった?

 巨匠だしすごいオーラがあったが、僕には主人公のポルトガル宣教師ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)を長崎に案内する村人信者のキチジローの役がいいだろうと言ってくれた。これがすごくずるくて汚い男。ロドリゴと一緒に役人に捕まって、キリストの踏み絵を強要されてみんな拒否するのにキチジローは踏んでしまう。解放されたらざんげし、また信者に戻る。

 −踏み絵を拒否すると拷問などが待っている。

 キチジローは何度か踏み絵を踏んでその場をしのぐが、ロドリゴにすれば「いいかげんなやつ」にうつるのは間違いない。その意味で、いいかげんで、よく言えば振り幅が広い。それは人間の弱さであり、強さであると思う。キチジローはそうして生き残るのであり、人間の生の本能にかなっている。宣教師のロドリゴはキチジローに振り回されるが、どこか憎めないところがあると思ったかもしれない。

■日・米・台湾合作

 −撮影は台湾で行われた。

 日本の京都で撮る話もあったが、いろんな問題があって台湾になった。京都の日本人スタッフが大勢参加し、長崎の街のロケセットを造っており、出演者ともども日本人が多くて、アメリカ、台湾、日本人が一緒になって作ったという感じ。現場では英語が多かったが、台湾語、日本語も飛び交った。スコセッシ監督が何よりも舞台となった日本に敬意を持って撮影してくれているというのが分かってとてもうれしかった。

 −どんな撮影現場だったか。

 ロドリゴのガーフィールドは「スパイダーマン」の俳優で、孤高な宣教師の領域に入っていて、ある意味メソッド俳優だと思った。僕のキチジローと対立するところもあって、にらみ合ったりもするが、本当になぐってやろうかという気持ちになったこともあった(笑)。それくらい役に入り込んでいた。また、村人の日本人は塚本晋也さん(監督)らみんな虐待されて日に日にやせ衰えていく役で食事を制限していたが、その前で僕だけはフレンチフライを食べて申し訳ない気がした。

 −完成した映画を見てどう思った?

 僕が見たのは12月半ば、大阪の松竹試写室だった。まずスコセッシ監督の懐の深さに感動した。主人公をはじめみんな立ち位置が同じで、この世界に疑問を投げかけている。僕の出番でカットされているところもあったが、「それでよかった」と思ったし、とても納得できた。答えを出そうとするのではなく、「そこに行くこと」を目指している。踏み絵のシーンの撮影後に「よかったよ」と言ってもらったことを思い出した。

 −キチジローを演じて一番感じたことは?

 何でキリスト教が江戸時代初期のあの時代に禁止されたのか。それは文化の衝突でもあった。スコセッシ監督はそれをフラットにストレートに描いている。踏み絵を踏むのは弱いのか強いのか分からないが、その間に余白があった。「あの時代にキチジローがいました」ということを感じてもらえればうれしい。スコセッシ監督に感謝している。

 くぼづか・ようすけ 1979年生まれ。神奈川県出身。95年にテレビドラマでデビューし、2000年に映画「GO」(行定勲監督)で日本アカデミー最優秀主演男優賞を最年少受賞。以後、多くのドラマ、映画で活躍。04年に自宅マンションから転落の事故があったが奇跡的に回復。復帰後はレゲエ歌手、カメラマンなどにも進出している。