日曜インタビュー

2人の大阪弁が楽しく

映画「破門 ふたりのヤクビョーガミ」
監督 小林 聖太郎
2017年1月29日

佐々木・横山の凸凹コンビ

「大阪弁じゃないと成立しないドラマ」と話す小林聖太郎監督=大阪市内のホテル

 黒川博行の直木賞小説を映画化した「破門 ふたりのヤクビョーガミ」(松竹配給)が大阪ステーションシティシネマほかで上映されている。大阪出身の小林聖太郎監督は「主演の佐々木蔵之介さんと横山裕君の凸凹コンビの大阪弁を楽しんでほしい。絶対に面白い」とPRに力を込める。

■黒川原作再び

 −大阪が舞台の小説が多い黒川原作を撮るようになったのは?

 テレビのWOWOWで「煙霞−Gold Rush−」(2015年)という黒川原作のドラマを撮って、そのときに黒川さんからほめていただいて、「次も頼んだよ」と任せてもらった。黒川作品は欲にまみれた人間が多く、マジな人はあまりいない。原作の舞台が大阪のど真ん中なので、京都出身の佐々木蔵之介さん、大阪出身の関ジャニ∞の横山裕君に出演してもらった。

 −2人の掛け合い、縦横に渡り合う。

 佐々木さんがやくざでイケイケの桑原という役で、弟分のぐうたら貧乏の二宮役に横山君。二宮はやくざではなく建設コンサルタント業をやっていて、弟分扱いを嫌がって、いつも命令口調の桑原にブツブツ文句を言っている。原作の「疫病神」シリーズは6作あり、映画は直木賞を受賞した5作目の「破門」。凸凹コンビの大阪弁の掛け合いを楽しんでもらえたらと思う。

 −共演者も関西出身の俳優が多い。

 それも狙いで、主人公の2人が、天才詐欺師の映画プロデューサー・小清水(橋爪功)にだまされて追いかける話で、橋爪さんは大阪出身でさすがに全編大阪弁をしゃべってすごかった。二宮の彼女の悠紀を演じた北川景子さんは神戸出身だけど、微妙に違う大阪弁を研究してしゃべってくれた。ほかに國村隼さん、キムラ緑子さんなど。小清水の愛人役の橋本マナミさんだけが他県(山形県)出身だった。

 −やくざの佐々木がけっこう怖い感じ。

 佐々木さんはやくざの役は初めてで、かなり入れ込んで役作りしてくださった。もちろん、黒川原作があるが、60代の黒川さんが書いたセリフは、ひょっとしたら若い世代がしゃべるニュアンスと少し違うかもしれず、撮影現場では本人たちのしゃべりやすい自然なアクセントでやってもらい、おかしければ僕が直していくようにした。

■腐れ縁のバディ

 −横山のぐうたらぶりもおかしい。

 佐々木さんの桑原は怖いけど、どこか男の愛嬌(あいきょう)があるし、ぐうたら横山君の二宮も、桑原を嫌っているけど、どこかで頼っているのであり、そこが「バディ(コンビ)もの」の面白さ。原作はシリーズ5本目で、2人の関係は「腐れ縁」のようになっている。映画は1作目なので、その辺をどう表現するか難しかったが、例えば米国映画「48時間」のような刑事と犯人の珍道中の感じも出したかった。

 −2人は現場でどう役作りをしていたのか。

 本読みの段階から2人はかなり息が合った感じで、それを微妙にズレている感じにしてほしいとお願いして「ため」を入れてもらった。息が合っているのだけど、どこかちぐはぐで、結果的にいい感じになっていればいいと。映画のラストシーンは原作とちょっと違うので、その辺も見てほしい。

 −振り返ればデビュー作が大阪の映画だったので、初心に返る感じがある。

 デビュー作は大阪・十三を舞台にした「かぞくのひけつ」だった。あれから10年たつが、もう新人でもなく、中堅の位置に近付いている。ここから飛躍できればという気持ちと同時に、確かに初心に返る心境というのもあった。まだまだだけど、一歩一歩先に進みたい。

 −今回の映画はシリーズ化できそうな気がするが。

 見てる方が「また見たい」と思っていただけたらうれしいし、お客さんの審判がとても気になる。公開前は「○」か「×」かを待っている心境で身体によくない(笑)。主役の2人が言っているように「大阪でヒットしないと始まらない」。よろしくお願いします。

 こばやし・しょうたろう 1971年生まれ。大阪府出身。関大法学部卒業後、原一男監督主宰のCINEMA塾に参加。その後映画「ナビィの恋」「パッチギ!」などの助監督に付き、2006年に「かぞくのひけつ」で監督デビュー。同作で日本映画監督協会新人賞受賞。以後「毎日かあさん」「マエストロ!」など。父親は元タレントの上岡龍太郎さん。