日曜インタビュー

リアルなコメディー狙う

映画「東京ウィンドオーケストラ」
主演 中西 美帆
監督 坂下 雄一郎
2017年2月19日

ヒロインに思い重ねて

「楽しい映画になった」と話す中西美帆(右)と坂下雄一郎監督=大阪市北区の梅田スカイビル
「東京ウィンドオーケストラ」の中西美帆(前列中央)=(C)松竹ブロードキャスティング

 「力のある監督が撮りたい映画を撮る」というテーマで立ち上がった松竹ブロードキャスティングの第3弾「東京ウィンドオーケストラ」が、テアトル梅田で上映中だ。映画初主演の中西美帆が「ヒロインに思いを重ねた」と入れ込めば、坂下雄一郎監督は「リアルなコメディーを狙った」とそれぞれ振り返る。

■初の商業映画

 −坂下監督初の商業映画になった。

 坂下 これまで「ビートルズ」「神奈川芸術大学映像学科研究室」などコメディー的な自主映画を撮ったり、大学時代に5本短編を撮っているが、人に頼まれて撮るのは初めて。商業映画として劇場公開されるのも初めてになる。松竹のオリジナル映画製作プロジェクトの前2作「滝を見にいく」「恋人たち」が評判になったので、少しプレッシャーを感じている。

 −彼女も映画初主演作になる。

 中西 子どものころから女優に憧れ、20歳の時に演技の道に入る決意をした。あれから8年たって、これでいいのかと悩んでいた時にいただいた作品で、役は鹿児島・屋久島の役所で働く女性事務員。仕事でいろいろ悩む話なのでとても親近感を持った。そんなに明るい役ではないのも、今の自分が演じてみたいという思いと重なった。

 −オリジナル脚本作りの苦労は?

 坂下 30人くらいのワークショップで作った映画チームだったので、その中の10人くらいの集団が一緒に行動するような作品にと、オーケストラの話を考えた。ワークショップで選ばれた俳優が商業映画に出るということで「素人がプロのふりをする」という感じで10人の素人オーケストラが、プロのそれに間違えられて右往左往する話に。

 −それを迎えるのが役所の樋口詩織という女性。

 中西 詩織が役所でコンサートの担当になって、東京ウィンドオーケストラを呼ぶ。それが「東京ウインドオーケストラ」という楽団。「ィ」「イ」が違うだけだが、彼らは10人編成の素人オーケストラ。最初は本物と思って接するが何かおかしいと分かってから彼女の表情が変わる。自分の責任だから何とかしなければならない。

■屋久島のパワー

 −屋久島の女性になりきっている感じ。

 中西 行ったことがなかったので撮影に入る前に訪問して、ドライブしたり島をゆっくり見学した。割と早くなじんで、屋久島の神秘的で不思議なパワーをもらったような気がした。道を猿と人間が一緒に歩いているのも何かいいなあと思った。撮影に入ってから、詩織はあまり感情を入れないでせりふをしゃべった方がいいという考えにつながった。

 坂下 初め詩織は朝ドラのヒロインのように明るくと思っていたのだが、中西さんと会って話していると、ヒロインと少し違うし、その辺は本読みの時から彼女と話し合った。詩織はオーケストラ騒動に巻き込まれるが、そんなにあたふたせずマイペースな感じで、少しずつそれを乗り越えて、最後に「少しだけ変わっていた」というくらいになってくれればいいと思った。

 −初主役というので力も入った?

 中西 今回は本読みから撮影までずっと監督に相談して、今まで一番時間がかかった気がする。これまではどちらかというと明るい役が多く、いらだったり、悩んだりすることが少なかったので、それを突き詰めていく時間が必要だった。それとオーケストラの皆さんとの掛け合いもあって「どうしよう?」と(笑)。

 坂下 オーケストラの出演者は劇団の俳優さんや演技初体験の人などが交じって、それぞれの役にチャレンジしている。彼らと対立する詩織との攻防というか、戦いがあってその辺の掛け合いが映画の面白さに。それを締めてくださったのがベテランの小市慢太郎さんで、詩織の上司役。元松竹の映画宣伝マンの松本行央さんが映画に初出演していい味を出してくださった。

 さかした・ゆういちろう 1986年生まれ。広島県出身。大阪芸大卒業後、東京藝術大大学院映像研究科に入学。自主映画「ビートルズ」と「神奈川術術大学映像学科研究室」が国内の映画祭で受賞し、本作が初の商業映画メガホンの新鋭。
 なかにし・みほ 1988年生まれ。神戸市出身。高校の時に映画「東京物語」を見て原節子に憧れる。2011年にNHKドラマ「神様の女房」で本格的デビュー。映画は「喰女−クイメ−」など。本作で映画初主演。