日曜インタビュー

若者と一緒に走る

映画「サクラダリセット」
監督 深川栄洋
2017年3月26日

新しい価値観と可能性

「実験映画だったような気がする」と話す深川栄洋監督=大阪・扇町の関西テレビ
野村周平(右から2人目)ら=(C)2017映画「サクラダリセット」製作委員会

 カルト的人気の河野洋の同名ライトノベルを映画化した「サクラダリセット前編」(ショウゲート配給)がTOHOシネマズ梅田・同なんばで上映されている。野村周平が主演した青春ミステリーで「若者と一緒に走って、新しい価値観と可能性を探った」という深川栄洋監督に話を聞いた。

■実験映画

 −今回は青春ミステリーに挑戦。

 カルト的人気のライトノベルが原作で、プロデューサーの春名慶さんから話をいただいて読んだ。書かれているストーリーを予定通り映画化するのは限界があると感じ、脚本を書くのが難しかったけれど、ある切り口をもってお客さんに提示しないといけないと思って僕なりの実験映画という気持ちで取り組んだ。

 −脚本で難しかったところは?

 舞台になっている桜良田市に住む住人は半分が特殊能力を持っており、芦原橋高校の「奉仕クラブ」でボランティア活動をやっている高校生たちが主人公。主人公の浅井ケイ(野村)は「記憶保持」の能力があり、一緒に活動する春埼美空(黒島結菜)は「リセット」の能力がある。ある事情で2人が組んで「リセット」を発動すると3日間、時間が巻き戻されてリセットされる。その仕組みを頭に入れてから、後は一気に書いた。

 −奉仕クラブが市の管理局と対立していくことになる。

 住人の能力を監視・制御しているのが管理局で、そこには「未来予知」の能力がある魔女(加賀まりこ)がいる。浅井が2年前に死んだ同級生の相麻菫(平祐奈)をよみがえらせようとしているのが契機になって物語は進む。原作を読んで長いこともあったが、途中で物語が一転するところがあり、そこからタッチが変わるので、前編・後編にして見せる方が面白いと思った。

 −ラストを言ったら怒られるが、そこで何か「分かった」と思わせられる。

 前編はインディ・ジョーンズじゃないが、浅井と春埼らはトロッコに乗って走っている状態にしたかった。冒険活劇を見ていると同時にハイブローな映画でもあって、若者たちの世界に入り込んで「彼らは何をするのだろう?」と思ってほしい。「リセット」と「リセット」の間にあるものが何であるか。トロッコに乗ったらもう降りられない。

■完成が見えない

 −若い俳優さんの反応はどうだったか。

 初めに書いた脚本は分かりにくいところもあったので、別にもう一冊脚本を書いて、それが好評で、野村君らは展開に乗ってくれて、撮影がスムーズにいったような気がする。撮影が終わって、編集の段階でまた脚本を元に戻しつつ、新しい展開も入れ込みながら作り直した。その辺で自分では「実験映画」という感じがしている。

 −後編(5月13日公開)でタネ明かしもあるが、前編は謎を残して終わる。

 浅井の頭の中にあるロジックがどうなっているかを考えさせるのが前編のポイントで、後編では浅井もこまになっていって、先が見えない展開になる。僕にとっても「完成が見えない映画」といった方がいいかもしれない。もちろん大事なことは決めており、「未来は若い人が作る」というテーマはあるし、若者が新しい価値観と可能性を探すというところに思いを込めている。

 −後編はどうなっていくのか。

 前編のラストで、それまで映画を見ていたお客さんの額縁が一気に壊れる。今までみていた絵からカメラが引いていくと、額縁を飾っていた壁が絵の一部になる。そんな感じで、管理局に浦地正宗(及川光博)という室長が現れて、奉仕クラブの若者と対決する。前編では魔女の存在に、そして後編は浦地に注目してほしい。いずれにしても、若い俳優さんと同時に冒険を体感してほしい。

 −次回作は?

 俳優の向井理さんから頼まれて「いつまた、君と〜何日君再来〜」を撮った。向井さんの祖父母がモデルの映画で、向井さんと尾野真千子さんが主演している。

 ふかがわ・よしひろ 1976年生まれ。千葉県出身。自主映画からスタートし、才能が認められメジャーに誘われ「60歳のラブレター」「半分の月がのぼる空」「神様のカルテ」シリーズなど多数のヒット作を。さらに「くじけないで」「トワイライト・ささらさや」「先生と迷い猫」など。次回作「いつまた、君と〜何日君再来〜」(6月公開)が控えている。