旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

アホ、ちゃうか!

2017年4月24日
ホテルマンのおもてなしは、どこへ…

 東京のホテルで見た、ホテルフロントマンの“アホ、ちゃうか”の光景を紹介しよう。連泊中の小生が夕方ホテルに戻りルームキーを受け取ろうとフロントを見ると、チェックインのお客で混雑中。ロビーで待機することにした。

 その時少し大きめの声が耳に入ってくる。ご年配のご夫婦と思われる方が恐縮した面持ちで話す声が聞こえる。地方から葬式に出席のため東京まで来たが、ご主人の気分が悪くなり、予約なしですが泊めてほしいという会話だ。

 フロントマンは「ご予約は?」。予約なしと再三聞いているはず。「部屋はご用意できますが順番に受け付けしますのでお並び下さい」。冷たい言い方だ。その時並んで待っていた会社員らしき若者が「私たちは大丈夫です。病気のお客さんを先にしてあげて下さい」と。拍手を送りたいほどの行動だ。

 しかしフロントマンは「他のお客さまにご迷惑ですからお並び下さい」。後ろに並ぶお客さんも「大丈夫です。先にしてあげて下さい」と援護射撃。拍手喝采だ。フロントマンの口から次に出た言葉が「レジカードにご記入下さい」。お年寄り夫婦には意味もわからない。当然である。そしてカードキーを渡す。ご夫婦は「あの、部屋の鍵は?」。フロントマンは「カードキーをお渡ししましたよ」。

 使い方くらい丁寧に教えてあげればと思う。小生、見かねてご夫婦に近寄ろうとした時、列に並んでいた若者が懇切丁寧にカードキーの使い方をご夫婦に伝授していた。ほっとするようにうれしい気分になる。ホテルマンよ、おもてなしはどこへ…。

 (ホテル・旅館プロデューサー)