旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

マチュピチュ? 下栗の里

2017年7月10日
神秘に満ちた長野県下栗の里

 中央道飯田から1時間15分、山深い谷間の景色の中、標高800メートル〜千メートル、最大斜度38度、その斜面に張り付くように家屋や田畑が点在する。初めて訪れた小生も度肝を抜かれた。

 車での訪問であったが、迷いながら最先端(写真の左先端)まで細い道を下ってみると、家屋のすぐ前は千メートルの断崖絶壁。足も体もすくんでしまう。どうしてこの場所に集落を作ったのか疑問も生じてくる。とても信じられない神秘に満ちた場所である。

 ここは日本のチロルと呼ばれる長野県下栗の里。われわれ凡人にはおよそ考えもつかない環境の地である。まさに摩訶不思議な世界。スタジオジブリの宮崎駿監督も一帯で行われる「霜月まつり」を見て「千と千尋の神隠し」のヒントを得たという。

 この地の特産でもある下栗芋は糖度が高く、日照時間が長い地の利を生かし、年2回収穫できる太陽と大地に恵まれている。下栗の二度芋という。数年前には隣接の集落から縄文土器が発掘され、同時期にも人が住んでいたことが推測される。

 江戸時代には幕府の直轄領となり、300人以上が住みついていたという。現在でも100人未満の人が暮らしている。南アルプスに見守られているここ下栗の里のルーツは謎らしいが、もしかすると太陽と大地に満ちたこの場所は私たちが思うより、実はとても暮らしやすい場所なのかもしれない。下栗そば、芋田楽はまさに素朴な味で旅心を満喫させてくれる。一見の価値あり!

 (ホテル・旅館プロデューサー)