旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

「いらっしゃいませ」の一言

2017年7月17日
「いらっしゃいませ」の一言は、楽しい食事へのプロローグ

 先日旅先でのこと。とあるお店に入ると、スタッフにいきなり「何名ですか!」と言われた。「その前に言うことがあるだろ!」なんて気の弱い私は言えないが、さすがにがっかり。あいさつは社会の基本。マスコミに紹介され、急に有名になり行列ができるようになった店である。

 押し寄せるお客にスタッフが混乱しているのであれば許せるが、人気があるという理由でお客に「食べさせてやるのにあいさつはいらない」的な店は不愉快極まりない。こういう店の人気は続かず、行列どころではなくなるのは目に見えている。

 レストランで、あいさつより難しいのは断り方。行列のお客を断念させる時だ。おいしそうに食べる人を尻目に帰るのはお客にとって最悪。もう二度と行かないだろう。

 数年前のことだが、夕方神戸のホテル内のレストランを訪れたとき、受け付けのスタッフによると10組待ち。仕方なく帰りかけたところに、当日の責任者だった副マネージャーが走り出てきて「せっかくいらしていただいたのに、本当に申し訳ありません」と深々と頭を下げられた。

 予約せずに行ったわれわれがうかつだった。彼らの非ではない。彼は館内の他のレストランにも問い合わせてくれたのだが、どこも満席。この日は結局近くのホテルレストランで夕食をとったが、「これに懲りずにどうぞまたいらして下さい」という言葉に、再来店を果たした。それ以来、私の定番レストランとして利用している。

 お客がお店に入った時の「笑顔」と「いらっしゃいませ」のあいさつは、楽しい食事へのプロローグ。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



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