旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

「清冽」な場所「安曇野」

2017年8月7日
「大王わさび農場」の湧水と水車

 北アルプス山麓に広がる安曇野。小説「安曇野」で描かれ、川端康成、井上靖、東山魁夷が「残したい静けさと美しさ」と名句を残した日本のふるさと。目に入ってくる光景すべてが五感に感じる場所である。

 今回は5年ぶりに「安曇野」を訪ねてみた。冬、御宝田遊水池の白鳥群は信州最大。春、特産わさびのかわいらしい白い花、夏、北アルプスからの伏流水、三連水車の風景、秋、安曇野のリンゴ畑。安曇野は日本の原風景をそのまま絵はがきにしたような場所である。

 長野道安曇野インターからすぐの「大王わさび農場」へ。ここは黒沢明監督の「夢」の舞台になった場所。久しぶりに目にする清冽(せいれつ)を極めた湧水の流れの中に凛(りん)と構える三連水車の風景に心も体も洗われるようだ。

 安曇野といえばここわさび農場と安曇野から眺める北アルプス「常念岳」の絶景が知られているが、小生のお勧めは、安曇野「道祖神」。500体を超える道祖神が至る所で旅人の安全と、人々の暮らしを見守っている。悪霊や疫病など邪悪なものが集落に入り込んでこないように、辻村境、峠などに祭ってきたのが始まり。それぞれの道祖神は「縁結び」「厄病退散」「五穀豊穣(ほうじょう)」「家内安全」「子孫繁栄」などの願いがこめられている。おもしろいところで「祝言像」「握手像」「笏扇像」「接吻道祖神」と思わずほほ笑んでしまうユニークなものも多い。

 どこまでも青い空と残雪の北アルプス、そして清冽を極める湧水。安曇野は今回もまた、美しい湧水を心に注いでくれた。

 (ホテル・旅館プロデューサー)