旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

日本最古の温泉・湯の峰へのひとり旅

2017年10月30日
日本最古の湯として、昔ながらの温泉情緒を残す湯の峰温泉

 西名阪道、南阪奈道を利用し、大和高田より国道24号線、五條市を経由して国道168号線を南下し、途中、谷瀬のつり橋、十津川を通過し本宮町へ。およそ4時間の行程である。

 湯の峰温泉は開湯1800年、日本最古の湯として、今も昔ながらの温泉情緒を残し、自然のままのたたずまいに旅愁を感じる。いにしえの人は熊野詣での旅の途中、湯の峰で湯垢離(ゆこり)を行い、聖地へのみそぎと旅の疲れを癒やしたのではないだろうかと想像してしまう。日によっては1日7回も湯の色が変化する天然温泉の岩風呂(つぼ湯)は参詣道の一部として世界遺産に登録されている。

 湯元の公衆温泉を利用してみる。何も手を加えていない素朴な湯船と着替え場は逆に新鮮ささえ覚える。熱めのお湯は本当に疲れを癒やしてくれる。

 湯の峰での伝説のひとつ「一遍上人」。一遍さんゆかりの地といわれ、16年間全国を歩く布教活動を行い、「時宗」を広めた。生涯自分の寺を持たず、漂泊の身であったといわれる。もう一つの伝説「小栗判官」は戦に敗れ、病が重くなり、遊行上人の導きと照手姫の情を受け、熊野に詣で、権現の加護と湯の峰の薬湯の効き目により全快し、小栗城15代当主になるがその後滅亡する。ひとつの英雄談として語り伝えられた。

 どんな場所であれ、そこには語り継がれる物語があるもの。こんな奥深い山に交通機関のなかった時代によくもたどり着いたものだと思いははせる。ゴボゴボと湧き出る90度の熱湯に温泉卵を試みる人たちの穏やかな光景に、歴史の隙間を垣間見たような気がする。

 (ホテル・旅館プロデューサー)