旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

初瀬街道、長谷寺

2017年11月20日
入り口の仁王門から本堂までの399段の登廊は圧巻

 “里”というフレーズがいちばんしっくりくるのはやはり奈良ではないだろうか。時間があれば訪ねたい場所がいくつも思い浮かぶ。「谷瀬の吊(つ)り橋」「川上村」「天川村」「みたらい渓谷」「吉野」、すすきの名所「曽爾高原」、石舞台の「明日香」等々。

 今回は国道165号の初瀬(はせ)街道沿いにある奈良県桜井市初瀬にある「長谷寺」に心が引き寄せられ訪れてみた。大和と伊勢を結ぶ初瀬街道を見下ろす初瀬山の中腹に建つ真言宗豊山派総本山である。「枕草子」「源氏物語」「更級日記」など多くの古典文学に登場する寺だ。

 門前までの参道に並ぶお店がとても懐かしく特別の雰囲気を醸し出す。入り口の仁王門から本堂までの399段の登廊(のぼりろう)(屋根付き階段)は圧巻である。天井には楕円(だえん)形の灯籠がつられ、摩訶(まか)不思議な世界を感じさせる。4月〜5月頃には見頃を迎えるボタンに彩られ、一層華やかな世界を体験できるという。

 また、境内には常時60人の僧侶が在山しており、絶えず勤行の声が響き渡り「僧侶の息づく寺」「読経の漂う寺」として好評を得ている。10月14日から12月3日まで、重要文化財でもある「本尊大観音尊像」の特別拝観もできる。舞台造りの本堂(国宝)は徳川家光による再建。まさに一見の価値ありというところだ。

 舞台から眺める光景は、身も心も研ぎ澄ませてくれる錯覚に陥る。精神の浄化のためにも、こういった場所は不可欠な存在であると気づかされた。心に栄養をつけ、今日のすがすがしい顔の賞味期限はいつまでもつであろうか。

 (ホテル・旅館プロデューサー)