旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

ホスピタリティーの心はどこに…

2017年12月18日
「おもてなし」の心がホテルのイメージを膨らませる

 駅からホテルに向かうタクシーの中、運転手さんが漏らした言葉…。「以前はいいホテルやったけど、今は結構しんどいらしい」。玄関に着いても迎えはなし、事務的ないんぎんな態度のフロントのチェックイン。客室はきれいだが、花ひとつない殺風景な冷たい部屋。

 かつてホテルには印象深いホテリエの存在があった。ホテルの名前からまず思い出すのはお気に入りのホテリエの顔であり、彼らの立ち居振る舞いそのものがホテル全体の粋なイメージを膨らませていた。

 最近ではそんな構図はめっきり減少した。いいサービスをしたところで、日本はチップをもらえないから、お金にならないことは無駄に思うのが今流。サービスという付加価値は求められなくなり、愛想のいいホテルは「面倒くさい」と嫌われ、会話なしのホテルが生き残る時代に。ホテル文化の消滅を想像してしまう。

 ホスピタリティーとは何だろう? ほとんどの人が「サービス」「おもてなし」という言葉は、仕事場にしか存在しないと思っている。たとえば、大切な人がいればその人を喜ばせてあげたいと誰もが思うはず。後になって「優しくしたから報酬をちょうだい」とは言わないだろう。普通、見返りは請求しないと思うが。仕事場以外でもたくさんの思いやりのシーンはあるはず。

 お客さまの相手役をしっかり務め上げる舞台であり、物語を演じてお客さまの思い出に花を添えることこそ、ホテルマンのおもてなしの仕事である。夢を売ることができるスペシャリストであることに誇りをもって、挑戦してほしいと切に願うばかりである。

 (ホテル・旅館プロデューサー)