旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

伝統、革新、古都 京都人

2017年12月25日
「一見さんお断り」も京都人らしいおもてなしの心

 京都でホテルをプロデュースしていた頃、それまでは知らずにいた「京都人」の気質に興味を覚えた。地方に行くとよくあるが、例えば鹿児島に行くと「薩摩人」とか、熱海に行くと「熱海人」と呼ぶ伝統みたいなものがある。強い自負心と誇り高さなのだろう。

 その権化というべきなのが京都人なのかもしれない。かたくなで他人を容易に受け入れない偏狭さが京都人にはある。そのありようは外部からやってくるものを「よそさん」と呼ぶ。よそさんへの態度はおおむね無視、迎合、反発に大別されるようだ。観光客とはまさに「よそさん」にほかならない。

 心の奥底では観光客より自分たちが偉いくらいに思っているが、観光客がいなければ生きていけない現実も知っている。だが、観光だけに頼らなければならないといった切迫感はない。無理してまで「よそさん」に来てもらおうとは思ってない。

 そうした姿勢を表した言葉が「一見さんお断り」だ。花街のお茶屋がそうだ。地位や肩書といった物理的条件だけではないからよけいにわかりにくい。京都独特の魅力と雰囲気があいまって、ミステリアスな響きをもつのである。「一見さんお断り」が定着した理由は、女所帯のお茶屋では面識のない人を簡単に迎え入れるわけにはいかなかったことと、原則支払いがツケであることとしているらしい。

 おなじみさんには特別サービスをしたいという京都人の「おもてなしの心」だと理解する。「一見さんお断り」と「おこしやす」は拒絶の思想に見えて、実は京都人らしいホスピタリティーかもしれない。

 (ホテル・旅館プロデューサー)