旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

いい宿あってのいい旅

2018年1月22日
モダンなデザインは懐かしさを感じさせてくれるが…

 「いい宿あってのいい旅」。私の行動指針である。利用者の目線でお客さまをお迎えする。ホテルであっても旅館であってもそうあるべきだと思う。

 先日、会合で横浜のシティーホテルを利用した。ホテルマンとしての駆け出しの頃、よくこのホテルに勉強がてら遊びに来たものだ。山下公園の脇に建つ歴史のある素晴らしいホテルである。

 ロビーに提示している翌朝の日の出時刻、本日の外国船の着岸時刻、天気予報等々、手書きの掲示板にホテルマンの心配りが伝わる。当時のパーティーなどのコース料理のメニューが扇に書かれていて、随分と参考になるサービスを習得した思い出がある。

 エントランス、宴会場、バーなどの昭和初期のモダンなデザインが、ノスタルジアを感じさせるホテルだ。何回となく利用しているが、宿泊をしたのは今回が初めてである。数十年におよび憧れていたホテルであったが、客室に入った途端、夢から覚めてしまった。

 ロビー、宴会場などの共用施設は古き良き時代の趣を残すのは大賛成であるが、客室、特に水回り、バスなどが昔のままの状態で、お湯も水もカランで調節する旧式のままである。いくら伝統のホテルでも、プライベートエリアは現代風に快適に過ごせる機能は必要ではないだろうか。数年前に大型リニューアルを終えたばかりと聞いていたが、客室には何も施されていないのにはびっくりした。

 たまたま総支配人が友人であった関係で理由を聞いてみた。共用部同様、昔の名残を感じてほしいという理由であった。楽屋落ちという言葉どおり、自分たちが体験もせず、会議室だけで創り上げた虚構の宿。「温故知新」を考え直す横浜の一日であった。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



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