旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

「我慢の限界」 旅館への期待とギャップ

2018年3月12日
予約時の情報は厨房に届かず…

 人間、期待を裏切られるのは切ない。雑誌に紹介され、施設も料理も素晴らしいと書かれた旅館。チェックインは午後2時、チェックアウトは午前11時とのこと。予約を入れ1泊2食1万8千円の部屋を頼んだ。予約の女性は嫌いな食べ物を聞いてくれた。エビが苦手だと伝えると「はい、承知しました」と返事。細かな心遣いにさすがと思い期待は高まる。

 さて、懐石風の夕食である。何といきなりお刺し身盛り合わせにエビが出てきた。確かにエビは嫌いだと言ったはず。とりあえずは箸をつけずに何も言わず我慢した。その後出てきた煮物椀(わん)のふたを取ると、またまたエビが乗っている。さすがに怒りが出てきて、仲居さんに「エビはダメだと予約時に言ったはずですけど」と訴えた。仲居さんはあわててお椀を持って厨房(ちゅうぼう)に走り、改めてテーブルへ戻ったお椀から見事に海老だけがどけられていた。予約時の話の情報は厨房には届いてなかったのだろう。

 そして続きがある。翌朝、チェックアウトまでゆっくりしようと午前10時過ぎに部屋でくつろいでいると、仲居さんが部屋にきて「お立ちは何時でしょうか?」。「チェックアウトは11時だと聞いてますよ?」。とにかく早く出てほしいという気持ちが見え見えだった。もはや怒る気力もなく早々に宿を後にした。

 嫌いなものは出さない、ゆっくりしてもらうための遅めのチェックアウト。経営者の考えは悪くない。しかし約束を守れないというのは問題外である。というより契約違反だと思うのだが…。

 (ホテル・旅館プロデューサー)