旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

新時代の朝食考(旅館)

2018年6月25日
ビュッフェ形式の朝食にも「おもてなし」の味付けが欲しい

 インバウンド(訪日外国人客)の増加に伴い、受け入れ側のホテル、旅館の対応に首をかしげることがしばしばである。せっかく日本を訪れた海外からの観光客の皆さまに、もっと日本の良さを感じてもらいたいと本気で考え「おもてなし」を実践しているのかと。

 朝食も、夕食もすべてビュッフェスタイル、いわゆるバイキング形式。バイキングが悪いとは言わない。地産の素材をふんだんに紹介するためにバイキング形式が必要ならともかく、8割方のホテルや旅館はただただやっつけ仕事。この土地で食べたい?と思わせる食材があるか。ましてや朝食終了時間が迫る頃は料理の入れ替えはなし。余り物を食べさせられる。同じ料金を頂いているなら早めのお客さまも終了前のお客さまも同じ条件で提供するのは当たり前だと思うが…。

 そんな中、心ある料理人もいる。朝食セットを提供しているある旅館の料理長の言葉。日本旅館での食事、特に朝食の献立が重要になるなか、「朝食の“汁物”といえば“みそ汁”にあらず」。そして汁物革命に挑戦するその姿勢が素晴らしい。

 郷土の素材を取り入れアレンジした、冷製仕立てや南国風など、その土地ならではの食材でより個性的に、ともすれば軽視されがちな汁物にスポットを当てている。朝食の場合、汁物=みそ汁では決してない。工夫次第でより印象的な朝食にすることができる。

 汁物の基本となるのは、手間を惜しまずしっかり取っただしのうまさ。例えば、みそ汁を作る際も、大量のだしを取ったとしても、みそを溶くのは小人数分ずつにする。これだけでもグンと味が変わる。だしを大切に、いろいろなバリエーションを創作することで朝食に個性をもたらすことが可能になる。

 魚介のポテトスープ、鮭(サケ)のみぞれ汁、野菜のにごり汁、冷製仕立て、スープゼリー等々。マンネリ化した朝食に定番のみそ汁も良いが、変わり種の汁物の工夫も利用者にはうれしいものだ。日本の代名詞「おもてなし」について、スタッフ一同の再考を促したい。

 (ホテル・旅館プロデューサー)