旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

ひとり旅、ひとり飯

2018年12月17日
「コロポックルヒュッテ」で極上のひとり飯

 絶好の秋晴れの日、久しぶりに信州へひとり旅。名古屋小牧から中央高速道をひたすら信濃を目指す。中津川で一瞬、木曽路も捨てがたいなと思いながらも通り過ぎ、駒ケ根サービスエリアで一服。珍しく駒ケ岳、南駒ケ岳が全貌を表している。

 このあたりからもう、吹く風が冷たく感じる。そして一路信濃路へ向かう。岡谷ジャンクションの標示を目にすると、松本、安曇野もいいなと気持ちが揺れる。その思いを断ち切り、諏訪湖方面へハンドルを切る。諏訪湖を過ぎ、八ケ岳の遠望を楽しみながら諏訪インターを降りる。

 降りてすぐの国道沿いにある峠の釜めし「おぎのや」。軽井沢の横川の釜めしと並ぶ名店である。寄ってみたい衝動を抑え、有名グルメではなく隠し名店での昼食を決行すべく、ビーナスラインで白樺湖を目指す。

 途中、信州そばの店が立ち並ぶ街道で、つい決心を曲げて信州そばの誘いに屈しようかと心の葛藤を振り払い、筆者の心の糧である車山高原、霧ケ峰へと足を伸ばす。山一面を覆うススキの光景はとにかく美しすぎる。蓼科山、八ケ岳連峰が雲一つなく雄大にそびえ、稜線(りょうせん)には富士山が空間に浮かんでいるように姿を見せる。

 絶景に心震わせ霧ケ峰へ。駐車場の一角の古い店で、朝取れのミルクとジャガバターで遅めの朝食。一斗缶にたっぷり入ったバターを好きなだけ取っていただくジャガイモは格別である。冷たく感じる風を感じながら北アルプスを望むこの地は別世界。

 そして目的の「コロポックルヒュッテ」のボルシチランチ。霧ケ峰のビーナスライン沿いのレストランの裏手を登り、徒歩で行くナビでは案内できない場所。古い山小屋風のカフェの中は何と満席状態。素晴らしい空気感と眺望とやさしいマスターが入れる食後のサイホンコーヒー。極上の時間。皆さんもぜひ行ってほしいお薦めの旅だ。

(ホテル・旅館プロデューサー)