Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

ET−KINGメンバー コシバKENさん

2018年12月6日
松井一郎大阪府知事(右から3人目)と手を合わすET−K I NGメンバー=今年2月、大阪府公館

 「♪一つにかける情熱 すべてがそこへと辿(たど)り着く Change the world ここから始まる歴史の瞬間 めっちゃおもろい時間を いつも人類は追いかける Back to my roots 愛のリレーで俺らここにいる」。2025年国際博覧会(万博)の大阪誘致のため、ヒップホップグループ「ET−KING」が作った応援ソング『この街の空』の歌い出しだ。ここから始まる歴史の瞬間−。大阪万博の開催が決定し、7年後の本番に向けた活動が始まろうとする今、この歌詞を改めてかみしめたい。『この街の空』に込めた願いを、メンバーのコシバKENさん(38)に聞いた。

■亡きリーダーも応援

 大阪市北区の所属事務所でET−KINGの他のメンバーやスタッフと共に、万博の開催地が決まる瞬間をインターネットのユーチューブで見ていた。大阪が選ばれた瞬間、皆で思わず「わー」「やったー」と喜んだ。大勢の人が誘致活動を地道に続けた中、僕たちも万博応援ソングを通して大阪万博の開催決定に携わることができ、光栄に思う。

 そこで、驚くことが起きた。皆でお祝いをしていると、突然、シャンパンからコルクの開く音がした。信じられないかもしれないが、コルクが勝手に開いた。今年1月31日に亡くなったリーダーのいときんさんがそこにいた気がした。いときんさんは大阪を愛していた。大阪への万博誘致の話を知った時も喜んでいたので、一緒に応援してくれたのだと感じた。

■パワーもらう

 万博応援ソングに着手したのが1年前。まずは、万博誘致に取り組む人たちとの意見交換から始めた。万博誘致に掲げられたテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」について、大阪府の担当者から聞き取りした。万博パビリオンの建設を目指す学生グループ「WAKAZO」の思いも聞くことができた。当時、いときんさんが肺腺がん治療に専念し、闘病中だったため、僕たちの気持ちは立ち止まりそうだったが、未来に進もうとする万博誘致の活動にパワーをもらった気がした。

 僕たちは1970年の大阪万博を体験していない世代だ。当時の中身は分からないが、太陽の塔や万博公園を見ると、素晴らしい万博だったと想像できる。三波春夫さんらが歌ったテーマソング『世界の国からこんにちは』は有名だが、僕たちが作った 『この街の空』は万博にあまりこだわらず、未来に向かうことを第一に考えた。

 歌詞にある「♪生きるリズム生まれる 生み出す力溢(あふ)れ出してる」は、府担当者やWAKAZOとの意見交換の中で出てきたフレーズだ。いときんさんのことも思い、「♪涙が止まらない日にこそ より顔上げてその先を見る 悲しみを知ったぶん 強くなれるはずだ」とつづった。

■感謝を込めて

 ET−KINGは1999年に結成した。メジャーデビューした2006年から09年までの間、僕たちは大阪・ミナミの大国町で共同生活を送っていた。朝起きてアルバイトに行って、帰ると歌を作って…の繰り返し。修学旅行みたいな生活だった。

 現メンバーのKLUTCH(40)、BOOBY(36)は大阪府泉南市出身で、センコウ(39)は福岡県出身、BUCCI(40)は長崎県出身の兵庫県育ち。僕は山口県出身だが、皆、この街の人たちに助けてもらい、育ててもらったと感じている。

 ET−KINGの真骨頂である『愛しい人へ』は、僕たちの思いを関西弁でストレートに歌っている。「♪おおきに この出会いに感謝」と。この瞬間を生きているのは当たり前のことではないと思う。だから、『この街の空』でも「♪この時代に出会えた全てに ありったけの感謝を込めて」と盛り込んだ。

 もう一つ、『この街の空』について言えば、タイトルに「空」を使った。空はどこの街も同じだ。誰もが自分たちの街を大切にしていると思う。僕たちにとって大切な街は大阪だが、人によっては秋田県だったり、島根県だったりする。空はどこでも変わらない。『この街の空』は大阪だけの歌ではない。そんな思いも込めた。

■当事者意識を

 25年の大阪万博開催が決まったが、これからが大変だと思う。大阪へ来てくれる人たちにいかに満足してもらうか。迎え入れる大阪の人たちは何をすべきか考えなければいけないが、おもしろいことを考えるのは楽しいはず。大阪の人たちが当事者意識を持ち、盛り上げていければと思う。

 万博開催まであと7年。僕の長女は小学3年生だが、その頃になると、高校生だ。4歳の次女も、小学5年生になっている。娘たちが大阪万博の会場へ出掛けた時、ET−KINGが会場のステージで歌っていれば、父親としての威厳を保つことができる。それまでは少なくとも頑張り続けたいと思う。

 コシバ・KEN 1980(昭和55)年生まれ。山口県下関市出身。大学進学を機に大阪へ。2003年にET−KINGへ加入し、MCを担当。趣味「打ち上げ」、特技「フットサルのベンチからの声出し」、好きな食べ物「柚子(ゆず)の効いたもの」、好きな飲み物「発泡酒」、大切なモノ「感謝と勇気」。

 〈ET−K I NG〉 1999年結成し、2006年にメジャーデビューした。『愛しい人へ』は代表曲。今年2月、万博応援ソングをはじめ地域活性化や子ども・福祉、健康に関して、大阪府と包括連携協定を締結した。来年1〜2月に結成20周年全国ツアー「やりたい放題やったる年(ねん)」を予定。大阪、東京、名古屋など13カ所を巡る。