亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

江戸時代の大坂

2016年6月18日

ごみ山怪物騒動

「ごみ山の主が人を襲う!」イラスト((C)合間太郎)

 北区扇町にある扇町公園は、プールや卓球場もあり、キッズプラザ大阪も隣接していることから、家族連れで大いににぎわっている。今はとても明るい雰囲気だが、江戸時代の終わり頃、その界隈(かいわい)は巨大なごみ捨て場だった。当然、ひどい悪臭がするので、周辺の住民から苦情が殺到。奉行所も放っておけず、同心の小西文吾に処理を担当させることになった。

 そのための人足を集めようとしたが、なぜか皆「とんでもない」と尻込みをする。よくよく理由を聞いてみると、どうやらごみの山に怪物がいるらしい。「そんなばかな」と小西は、いやがる人足頭を引き連れて、その夜、ごみ山へと行ってみた。

 シーンとした広い土地に、異臭を放つでっかいごみ山がある。そこらを見回ってみたが、別段、怪しい雰囲気はない。「皆の見まちがいだろう」と、小西が言ったとたん、むくむくとごみ山が動きだした。見ると山が四つ足で、のしのし歩いている。動くにつれバラバラとごみが落ちると、そこに3メートルを越す大トカゲの姿があった。

 人足頭はわなわな震え、腰を抜かして役にたたない。小西は大トカゲに「悪かった。おまえの寝床とは知らなかった。許してくれ」と言い、ていねいにあやまるしぐさをすると、人の言葉がわかったのか、大トカゲはきびすを返してそこから去ろうとした。

 トカゲが後ろを向いたとたん、月は陰り、真の闇となる。小西は「今だ」とばかりに斬りつけると、月が雲間より出て、辺りが再び明るくなった。

 見ると人足頭の前には、ぴくぴく脈打つ尻尾がある。大トカゲは尻尾を切られたが、悠然と、のしのし歩き大川へと入ってゆく。無残な小西を口にくわえて…。

 万延(まんえん)元年(1860)の事件ということである。

(日本妖怪研究所所長)

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