亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

大阪市淀川区十八条 「夜泣きやもり」

2016年9月24日
「毎晩泣いていたのはお前か!」イラスト((C)合間太郎)

 淀川区の「夜泣きやもり」の話。その昔、十八条村に200年以上続いている大きな農家があって、そこの息子が嫁をもらった。元気な花嫁だったが数日すると顔色が悪くなり、すっかり元気がなくなってしまった。しかも、なんとなく何かにおびえるような様子さえ見せるので、息子が「何か心配事でもあるのか」とたずねると、「実は毎晩、夜が更けてきますと天井裏から泣き声が聞こえてくるのです。それがもう怖くて怖くて…」と答える。

 でも、そんな話は今まで一度も聞いたことがない。きっと何かの聞き違いだろうと言って、嫁の話をまったく相手にしなかったが、何度も何度も涙ながらに訴えるので、仕方なく、一度天井裏を見てくれば気がすむだろうと、息子は天井裏へと上がって行った。

 すると、なんとそこには大きな梁(はり)に巨大なやもりが5寸くぎで刺されていて、身動きできない状態にあったのだ。そうか、こいつが毎晩、体が痛くて泣いていたのか。しかも、その巨大やもりのために他のやもりたちが、せっせと餌を運んでいるのだ。

 息子はびっくりして、その5寸くぎのさびぐあいから、そうとう前の出来事と思ったが「まてよ、たしか、この屋根裏を修繕したのはおやじだったよなあ、わしがまだ子どもの頃や」。そんなに前から、あのやもりは天井裏で泣いていたのか…と。

 はたして、そのやもりを助けたかどうかまでは昔話にないが、やもりは「家守」。家を栄えさせたり外敵から家族を守ったりする話があちこちに残っている。実際に害虫を食べてくれるので、本当にやもりは「いい奴」なのだ。

 きっとこの巨大やもりも、息子が助けて夫婦円満に暮らしたに違いない。

 (日本妖怪研究所所長)