亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

大阪市北区天満「人魚の正体」

2016年10月8日

飛ばされ続けて見世物に

「とらやん、ポーンポーンと雲の上」イラスト((C)合間太郎)

 天満にいた「とらやん」の昔話。とらやん、母親から「上手にさばいてや」とウナギの入った桶(おけ)を渡されたがウナギは逃げだし、溝を通って大根畑に隠れてしまった。とらやんも追っかけ畑に入ったが「大根どろぼう!」と、おっさんに怒られ説明しても許してくれず「一番大きな大根を抜いたら許してやる」ということになった。

 とらやんが力いっぱい引き抜くと、はずみで大根もろともポーンと空に舞い上がり、どすんと桶屋の庭に落ちた。すると主人から「ちょうどええ手伝ってくれ」と言われ、とらやんが桶のタガをはめるのに竹をグーンと曲げると、今度はその竹にピーンとはじかれ、傘屋の仕事場に落ちた。落ちた拍子に傘をこわしたので、弁償するかわりに傘張りの仕事を手伝うことになった。

 なかなかええ傘ができたので、とらやん外に出て、傘を持って歌舞伎の見えを切るまねをすると、一陣の風が吹いて傘といっしょに雲の上まで飛ばされた。なんと雲の上には鬼がいて、またもや助けてやるから仕事を手伝えと言われ、じょうろを渡される。それで雲の上から水をまくと下の人々が逃げまどうので、おもしろがって見ているうちに足をすべらせ大阪湾にまっさかさま。海の底に沈んでいくと、大きな亀がきれいな御殿に連れて行った。そこにはきれいなお姫さまがいて、とらやんを大歓迎。「一生いてもいいわよ。でも、おいしそうなお肉が沈んでくるのだけは食べちゃだめよ」と言われる。

 そんなある日、目の前にうまそうな肉がおりてきた。つい約束を忘れて食いついたら釣り上げられ、とらやんは漁師たちの船の上。漁師がひと言「ぶさいくな人魚やなあ」。とらやん、いつの間にか海の中で人魚になっていたのだ。しかも人間の言葉が出てこない。漁師たちは相談して、殺すよりは道頓堀で見世物にした方がいいということになった。

 これは江戸の終わり頃、道頓堀で評判になった見世物、人魚の正体の話である。

 (日本妖怪研究所所長)


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