亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

サイコロ博打の女、こま

2016年12月3日

ご飯がわき出る地蔵の茶碗

「お地蔵さん、丁か半か」イラスト(C)合間太郎

 その昔、サイコロ博打(ばくち)の大好きな「丁半のこま」という女がいた。人の顔を見るとすぐにサイコロを振りたがるので、このあだ名が付いた。でも貧乏すぎて、こまに勝っても取る物がないから仕事を手伝わすぐらいしかできず、あまり相手にされなくなってしまった。

 そんなある日、こまは人が相手にしてくれないので、小さな地蔵堂で「お地蔵さん、博打しょうか」と言うと、地蔵はニコニコとウンと答えた。こまは地蔵に供えてある茶碗(ちゃわん)を取ってサイコロを入れ「丁か半か、うちは丁や、お地蔵さんは半か」と聞くと、地蔵はウンと答える。茶碗をあけると丁でこまの勝ち。その日は、何回やってもこまの勝ち。こまは地蔵からもらうものがないので、その茶碗をもらっていいかとたずねたら、やはり地蔵はウンと言う。

 でも帰っても、こまは食べるものがない。「ああ、この茶碗いっぱいのご飯が食べたいなあ」と言うと、茶碗から白いご飯がわいて出た。またそのご飯のおいしいこと…。

 こまは今度は、おかずの出てくる皿がほしくなって、また地蔵堂に行って博打をした。しかし今度は、こまが大負けしてしまった。仕方がないので帰ろうとすると、今までウンとしか言わなかった地蔵が「負けたんやから、なんか置いていきなさい」と言う。そらそうやなと、こまは地蔵に茶碗を返した。

 次の日、こまはまた地蔵の所に行き、「さあ、今日は一回きりの大勝負。うちが勝ったらこの茶碗と皿をもらうで」と言うと地蔵が「わしが勝ったら、もう博打はやめてまじめに働いてくれ」と言う。結果は完全にこまの負け。こまは次の日からサイコロを捨てて、まじめに働くようになり、何年か経つといつでもおいしいご飯とおいしいおかずが好きなだけ食べられるようになった。さすがはお地蔵さんですね。(日本妖怪研究所所長)


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