亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

高石市高師浜

2017年1月14日

目のあるほら貝と死ねない美女

「わしはここにおるんやけど…」イラスト(C)合間太郎

 いつの世も不老不死を願う人がいる。そのための果実を求めたり薬を調合したり、古今東西いろんな伝説があるが、高師浜(たかしのはま)にはこんな昔話がある。

 高師浜がまだ高石浜と呼ばれていた頃、「海辺で目のあるほら貝を見つけたら煎じて飲むと良い。そうすると絶対に年をとらず死ぬこともない」といううわさが広まった。それを聞いた浜一番の長者が、大勢の人を使って目のあるほら貝を血まなこになってさがした。しかし、いっこうに見つからない。最初はみんなおもしろがって参加したが、まったく出てこないので、ついにはひきあげて、長者ひとりが浜をあちこちさがすようになった。

 ある夜、長者がさがし疲れて岩かげで休んでいると、二十そこそこの女が「何か、おさがしですか」と声をかけてくる。月光を浴びた、この世の者とも思えぬ美女だが、どこかさびしげである。長者が目のあるほら貝をさがしていると言うと、「人が死んでいくのは世の定め。いつまで生きていても嫌われるだけです」と答える。

 彼女は十八のときに高石浜の金持ちの家に嫁いだが、2年後に病気にかかって生死をさまよった。そのときにある山伏が、目のあるほら貝の話をしたら、夫は人手を惜しまずさがしたのでついに見つかり、それを煎じて飲むと病気が回復したと言う。

 それから年をとることなく家族はすべて死に絶えたが、自分は当時の姿のまま生きて、ついには妖怪の類と思われ恐れられ、ひっそりと裏山の洞窟で暮らすようになったと言う。長者が「では今は何歳か」と聞くと、女は後ろを向いて「六百四十二歳」と答えた。長者は恐ろしくなって家にかけ戻り「目のあるほら貝などいらん」と家族に伝えたという。

 まあ、たしかに人間死に際は大事。でも私は今の世の中がどうなっていくのか楽しみで、「自分は二百歳まで生きる」と公言してますけどね。

 (日本妖怪研究所所長)


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