亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

和泉市

2017年4月24日

魚の恩返し「かしき長者」の昔話

「海が消えて金色の砂浜が…」イラスト(C)合間太郎

 海に漁に出る男たちは勇ましいが、その陰で彼らの身の回りの世話や炊事、洗濯など、地味な仕事をする者のことを「かしき」と言う。かしきは年少者や、船乗りになるための修業の身の者が多かった。何日も漁に出たままの大きな船には、かしきが特に必要で、こまめに働き、みんなの世話をするのだ。

 そんな中で、泉州にちょっとぼんやりしているが、心のやさしいかしきがいた。魚をつかまえるのが猟師の仕事とはいえ、魚たちがかわいそうで、男たちの食べ残しなどを集め「海のみんな、これを食べて漁師のえさは食べるなよ。おいしそうに見えてもがまんしろよ。つかまるんじゃないよ」と言いながら海にまくのである。そもそも漁の仕事をするのがおかしい気もするが、昔の漁村なので、他に仕事が選べなかった時代なのである。

 そんなことを続けて何年かたった満月のある夜。甲板に上がったかしきは、外を見て驚いた。大海原のはずが、まったく海がない。船は砂の上にあって、じっとしている。「これはたいへん」と、みんなを起こそうとするが、誰もぐっすり寝込んでいて、まったく起きない。

 かしきが船から外に降りてみると、一面にキラキラ金色に輝く砂だらけ。あまりに美しいので、ずた袋を持ってきて砂をいっぱい入れ、その夜は寝た。

 次の朝、起きて昨夜のことを言うが、みんなは「ねぼけてないで、しっかり働け」と言うだけ。後日、浜に帰って船主のじいさまにその話をして、ずた袋の中を見せるとじいさまがびっくりして、「こりゃお前、砂金やぞ」ということになり、その砂金でかしきは大金持ちになった。

 みんなから「かしき長者」とよばれるようになった男の話。和泉市に伝わる。

 (日本妖怪研究所所長)


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