亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

阪南市黒田「幼なじみに化けた黒猫」

2017年7月3日

化け物退治 勇気ある孝行息子

「そんな物騒なもん捨てて、はよ来んか」イラスト(C)合間太郎

 その昔、阪南市黒田から新町への道はとても寂しく、男でも夜は通らない一本道。そんな所だから怪談のタネは尽きない。しかもえたいの知れない化け物に実際に襲われる事件まで起きた。若者が集まると、ついその話になって怪談話で盛り上がり「行ってみよう」という声も出るが、誰も怖がって二の足を踏んでしまう。そんな様子を見て庄屋が、化け物を退治した者には「小判3枚出す」と言いだした。

 若者の中に母親の看病をしながら暮らす石工の金太という男がいた。金太は「小判3枚くれるなら、おっかあの薬代に」と言って商売道具のノミを2本持って夜ふけに出かけた。

 道は真っ暗。真の闇。月もなく足元もよくわからない。「小判小判」と言いながら、気を立てなおして前へと進む。すると向こうからジャンジャンチーン、という不気味な音が聞こえてくる。「こんな夜中に葬式行列かな」と思っていると、そこに幼なじみの勘太が立っている。「こんな所で何しとる。お前のおっかあが亡くなって、運んで行くんじゃ」と言う。「えっ、おっかあが死んだ」とびっくりして聞くと、「そうや、ついさっきのことや。そんな物騒なもん捨てて、はよ来んか」と言うのだ。

 金太は驚いたが、よく考えたら息子を置いて近所の人が葬式をするのはおかしい。しかも夜中や、と思って勘太を見ると、この闇の中に勘太の姿だけがくっきりと見える。あとはまったくの闇だ。

 そこで眉にツバをつけ「それやったら、このノミあずかってくれ、わしが棺おけかつぐさかい」と言ってノミをさし出すと、勘太は妙に喜んで手を出した。そのスキに思いきり勘太の胸をグサリとさした。「ギャーッ」と叫んで勘太はドサリと倒れる。闇が晴れて月光の下で見ると、大きな黒猫が絶命していた。金太は庄屋から小判3枚とたくさんのほうびをもらい、村の衆から勇気ある孝行息子とたたえられたのは言うまでもない。

 (日本妖怪研究所所長)