亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

大阪市城東区鴨野

2017年12月4日

金の音に取り憑かれた兄弟

「チャリンチャリン、ニタ〜」イラスト(C)合間太郎

 今回は鴨野の異常な働き者の兄弟の話。その兄弟はとにかく朝から晩まで一生懸命働いた。お金をためるのが唯一の楽しみで、まったく遊びなんてものはせず女にも興味なし。着る物も肌にやさしいとか、やわらかくてフンワリなんてものは着ることがなく、安物のペラペラの着物を着て、とにかく働いた。

 食事も粗末なものですませ、おいしいものに見むきもせず、ひたすら金をためこんだ。そして毎夜、その稼ぎを大きな壺(つぼ)に落として、チャリンチャリンという金の音を聞きながら、顔を見合わせニンマリ笑う…。

 そんな毎日だから病気にならない方がおかしい。ついに兄が倒れて死んだが、弟は何事もなかったかのように働いていた。そして夜になると床下から壺を出してきて、チャリンチャリン…。「兄やん、今日はこんだけ稼いだで」と、そばに兄がいるかのようにつぶやくのである。

 何年もそんな生活を続け、ついに弟も病気になる。もう今夜限りかというときに、隣の男を呼んで「もうわしもあかん。カネを鳴らしてくれ」と言う。隣の男は、てっきり兄の仏壇の鈴(リン)かと思い持ってくると「ちがう。床下の壺の中のカネを鳴らすんや」と言う。

 床下から、いつもの壺を持ってきてもらった弟は、ふとんからむくりと起き上がり、中の金を手ですくい、チャリンチャリンと音を立てながら、落としてはすくい、すくっては落としを繰り返して、ニターッと笑う。死にかけの男のあまりの不気味さに隣の男も逃げ帰り、翌朝おそるおそる行ってみると、ついに弟は壺をかかえるように死んでいた。その後、家は荒れ放題となったが、兄弟の執念を恐れて誰も跡に住む者がなかったという。

 金に取り憑(つ)かれた兄弟の話。その後、誰かがその金に手をつけたとしたら、恐ろしい怪談になっていたかもしれませんね。

 (日本妖怪研究所所長)


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