亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

高石市

2018年10月1日

橋の下で小豆を洗う音がする

「おい、これが小豆か!」(イラスト(C)合間太郎)

 高石に正直者で仲の良い夫婦がいた。いっしょになって10年になるが子どもができない。どうしたものかと思っていると、家の近くの橋のたもとに地蔵が立っているのを思い出し、願掛けをしたらどうかと、2人して毎日「子どもができますように」と、お願いをしに行くことにした。

 毎日通って2年が過ぎた頃、念願の男の子が誕生した。そうなると100日目の「食い初め」の日に備え小豆を用意しないといけないが、夫婦には小豆を買う金がない。そこで「そや、もういっぺん、お地蔵さんにお願いしてみよ」と夫が言い出した。妻は、あつかましいにもほどがある、と止めたが、夫は地蔵にお願いに通った。

 明日が食い初めという前の晩、あきらめながらも橋を渡ろうとすると、橋の下から小豆を洗う音がする。もしやと思い降りてみると、ザルに一升のきれいな小豆が置かれていた。

 やれやれ、無事に食い初めも済んだというところへ、近所の男がやってきて「もろた小豆ご飯、うまかったなあ。あの小豆どこで手に入れたんや」と聞いてきた。夫は正直に言うと、男はさっそく地蔵の前に行って「わいの妹も食い初めをやるんで、小豆を一石ほどおくれや。あいつの願いは聞いて、わいの願いは聞かんちゅうのは不公平というもんや」と、まるで地蔵をおどすような、あつかましい願いをした。

 そうして男の決めた日、橋の下にきれいな小豆が袋に入れられて山のように置かれていた。男は喜んで町の問屋へ持ち込んだが、主人が袋をあけてびっくり。中は石ころがつまっているだけ。ようもだましたな、と若い衆に袋だたきにされて逃げ帰ったというお話。

 小豆を研ぐ妖怪で有名なのは「小豆研ぎ」。大阪に小豆研ぎの話はないが、これが一番近いかな。

 (日本妖怪研究所所長)