亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

寝屋川市

2018年12月11日

妖怪退治で名をあげた男

「勘七! お前のおとんの野辺送りや」(イラスト(C)合間太郎)

 昔、寝屋川に西坂という坂があって、その登り口に、せんだんの木があった。いつしかたちの悪い妖怪が出るようになり、道端にいい温泉が湧いていると思って漬かっていると肥だめだったり、歩いていると寝屋川に突き落とされたり、悪いことこの上ない。

 ある日、勘七という男が友達と婚礼に招かれての帰り道、せんだんの木の側を通りかかると、上から何者かが勘七の背中に飛びついてきた。びっくりしてよろけて前のめりになり、とっとっとっと歩いた拍子に、倒れそうになる勢いのまま腕をつかみ、ともえ投げで思いっきり投げ飛ばしたら「ギャーッ」という悲鳴とともに、黒い影が消えてしまった。

 これは、まったくの偶然の出来事だったが村で有名になり、村人や村長までもが「化け物を退治してくれ」と頼みにくる。女たちは勘七に色目を使いだし、もう後には引けんと化け物退治に乗り出すことになった。

 その夜、勘七が出刃包丁を持ってせんだんの木に向かうと、一人の男が寄ってきて「勘七! こんなところで何しとるんや、お前のおとんが病気で死にかけとるぞ」と言う。見ると、もう死んでしまったのか野辺送りが村の方からやってくる。「おかしいな。うちのおとんは、まだまだピンピンしとるぞ」と思い、こっそり出刃包丁を背中に持って「おとん、おとん」と、ウソ泣きしながら野辺送りに向かって行った。

 それを見た男は「しめた」と、勘七をはがい締めにしようとして、またもや「ギャーッ」。男があわてて逃げ出すと野辺送りも消えて、きれいな月夜となった。

 次の日、村人がせんだんの木のあたりを見ると、大きな古狸(タヌキ)が腹から血を流して死んでいた。化け物は狸のしわざだったのである。ちなみに書き物によっては「勘八」と書いてあるものもある。

 (日本妖怪研究所所長)