岡力の「のぞき見雑記帳」

塚口サンサン劇場

2016年10月29日

時代の逆いく創意工夫の映画館

映画「夢二 愛のとばしり」アフタートークショー風景

 阪急電鉄梅田駅から神戸本線に乗り12分、兵庫県尼崎市に位置する塚口にやって来た。

 駅南側には、地域のランドマークである複合商業施設「塚口さんさんタウン」がそびえ立つ。大阪市内の繁華街とは少し異なる庶民的な風情に心ときめく。施設の名所と言えば「塚口サンサン劇場」。関西人にはなじみのある老舗の映画館がひそかに話題を呼んでいる。

 1953年に「塚口劇場」の名称で創業。戦後の尼崎、国道2号線が通る阪神沿線はトラックの往来が多く、最盛期には50カ所におよぶ映画館が点在していた。そんな中、映画館のなかった阪急沿線に誕生したのが同劇場だった。坂道がなく平たんな場所に立地している事から自転車で気軽に行けるとあって、多くのお客さまでにぎわった。

 1978年、駅の再開発に伴い「塚口サンサン劇場」としてリニューアルオープンした。4スクリーンを誇る大型施設。東映、東宝、松竹からなる邦画と洋画の大作を中心に公開し、シネマコンプレックスの先駆けとなった。しかし時代の移り変わりにより郊外に多くの競合が取り囲み自動車で映画を見に行く時代となった。

 周囲がデジタル上映に切り替えはじめた2011年、転機が訪れる。特撮テレビ番組で一世風靡(ふうび)した「電人ザボーガー」のリメーク作品を35ミリフィルムであえてアナログ上映した。時代の逆をいく発想は、多くの映画ファンから称賛を得る事となった。

 さらに挑戦は続いた。7年前には、女性客獲得に向けトイレを改築。「日本一、トイレがキレイな映画館」と呼ばれるようになった。ほかにも紙吹雪やクラッカー音を人手で行うインド発祥のマサラ上映や拡大した音量が体感できる重低音ウーハー上映など、作品に合わせた創意工夫のサービスを次々と実現している。商業施設の風景が均一化する中、強烈な個性を発揮するエンターテインメント劇場に目がくぎ付けである。

(コラムニスト)

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