岡力の「のぞき見雑記帳」

ニホンオオカミ終焉の地 (奈良県吉野郡東吉野村)

2018年9月11日

夢とロマンを求めて…

ニホンオオカミのブロンズ像(制作=故久保田忠和氏・奈良教育大学教授)

 大阪難波駅から近鉄電車に飛び乗り榛原駅で下車。駅前発のバスに揺られて向かった先は東吉野村。今から100年以上前に絶滅したと言われるニホンオオカミが最後に捕獲された場所である。

 明治38年、鹿を追う若雄のニホンオオカミが河川の凍った停滞水で足を奪われたところ、筏師によって撲殺された。その後、鷲家口の宿屋芳月楼に滞在していた東亜動物探検員、米人マルコム・P・アンダーソンのもとに持ち込まれたその亡きがらは8円50銭で買い取られた。「採集地 ニホン・ホンド・ワシカグチ」と記録された頭骨と毛皮は、現在もロンドン自然史博物館で貴重な資料として保管されている。

 体長95〜114センチ、かつて本州、四国、九州に生息していたニホンオオカミと呼ばれる生き物は多くの謎を残してこの世から消えていった。絶滅理由に疫病、捕食動物減少、山間部の開発などが考えられるも定かではない。国内では上野にある国立科学博物館、東京大学農学部、和歌山県立自然博物館に立像の剥製が存在する。

 私自身、国立科学博物館と和歌山県立自然博物館に足を運び展示を見たが、それぞれ異なる姿、形をしており困惑した。一説には独立種ではなくタイリクオオカミの亜種とも言われており、さまざまな臆測が飛び交っている。

 ヨーロッパでは羊を襲う事から悪者として童話に登場する。しかし日本では農作物を荒らす動物を捕食したことから「大神」としてあがめられてきた。その密接な関係を築いてきたオオカミを失った山では、シカやイノシシが増え深刻な被害になっている。役場からすぐの場所にあるブロンズ像前で大自然を眺めていると、今にも遠ぼえが聞こえてきそうだった。どうかお元気で、いつの日かお会いしましょう。

(コラムニスト)
 ■参考文献
 『ニホンオオカミの像』『東吉野村とニホンオオカミ』(発行・東吉野村教育委員会)『ニホンオオカミは消えたか?』(宗像充著・旬報社)『オオカミを見る目』(高槻成紀著・東京書籍)