2016年10月26日

花に囲まれ夢へ一直線


「フラワー&ベーカリーHaRu」オーナー
児島 陽子さん(45)=鳥取市=

 「花を介したコミュニティーをつくりたい」。鳥取市内で花とパンの店「フラワー&ベーカリーHaRu」を経営する児嶋陽子さん(45)。紆余(うよ)曲折ありながらも自分の思い描いた形にたどり着いた。楽しみと不安はあるが、「やりたいことが全てできているから幸せ」。来春には花を使った障害者の就労支援を始めようと、新たな事業への準備に取りかかった。

 ショップのドアを開けると、優しい色合いの花々と香ばしいパンの香りが立ち込める。そしてはじけるような児嶋さんの笑顔と笑い声が出迎えてくれる。

■花屋のバイト経験皮切りに

 幼い頃の夢は保育士だったが、19歳の時、花屋でアルバイトを経験したのを皮切りに、鳥取や神戸の花屋で修業。ウエディングプランナーなどの仕事にも従事したが、気がつけばいつも傍らに“花”があった。「やっぱり花が好き。自分の人生に欠かせないもの」と実感したという。

 「会話を楽しみながら花を囲みたい」と一念発起し、2000年、念願のフラワーショップを鳥取市内に独立開業した。生花や鉢ものを販売する一方で、一番力を入れたのが当時はまだ珍しかったフラワーアレンジメントや特殊液で生花を長期間保存するプリザーブドフラワーの教室。1人、2人…と評判を呼び、100人に達する盛況ぶりに「需用がある喜びを肌で感じた」。

 受講生との距離が近くに感じられる喜びはひとしおで、“教える側”“学ぶ側”の立場に違いはなかった。だが、育児に悩む母親や転勤族の寂しさを募らせる女性、心に不安を抱えながら前を向こうともがく人など、あまりに花に癒やされる人が多いことを痛感。「自分にしかできないことがもっとあるはず」という思いが胸にわき上がった。

 そんなある日、来店客の女性のひと言に心が突き動かされた。「ダウン症の娘が花屋で働けたらいいな」。家で花を飾ったり、フラワーアレンジメントを作る時の娘の表情が生き生きとして映るという。

 そうだ! “花に触れる”“つくる”という行為を、障害のある人の仕事として提供できないか。フラワーアレンジメントやプリザーブドフラワーを制作する技術を培い、作り上げた商品を販売し、社会とのつながりをもつことで、新たな幸せややりがいを実感できるのでは-と新たなアイディアが浮かんだ。

■障碍者の就労支援へ新事業

 花を使った障害者の就労支援につなげるため、第1弾として来春の開始を目指すのが、障害者が作ったプリザーブドフラワーをショッピングサイトで販売し、販路拡大につなげる試みだ。

 そのためにもサイトの立ちあげにかかる費用はクラウドファンディングで募集。さらに就労支援施設の支援員にプリザーブドフラワーを商品化する上での高い技術力を身につけてもらい、そのノウハウを利用者に教えてもらう必要がある。

 こうした思いを実現するため、花を通じた障害者の就労支援の先駆者である、東京の一般社団法人アプローズ代表理事、光枝茉莉子さんの講演会を企画。11月19日午後1時半から、鳥取市伏野の県立福祉人材センターで開く。入場無料。

 児嶋さんを夢の実現に駆り立てたきっかけは、3年前に結婚したパン職人の夫、良典さん(45)の存在。「やりたいと思ったことはやるべき」。最強の味方が傍に居てくれるから、信念に揺るぎはない。

元気の源 花を介した出会いと会話

元気の源は、やはり「花」を介しての出会いとおしゃべりが一番。花の好きな人が集まるから、とにかく楽しくてたまらない。「児嶋さんじゃないとだめなんですー」のひと言に、何でもしてあげたいと奮起するという。「料理」も得意の一つ。どんなに疲れて帰っても愛情を込めて作る。また来店客のほとんどがプレゼント用の花を求めるが、花一輪を買いに訪れる男性客の姿に物語性を感じるとうれしくなる。「花が心を癒やしている」。お店でも家庭でも会話の“花”が咲いているのだろう。

 ○…児嶋さんとの出会いはフラワーショップを開業してまもなくから。贈り物の花を求める時は、色合いや年代などイメージを伝えるだけで、想像以上の仕上がりにこちらの気持ちも高まる。児嶋さんの笑顔のようにいつまでも色あせない。取材中、男性が奥さんへの結婚記念日のプレゼントにと花束を買いに来店。恥ずかしそうにしながらも、いつしか満面の笑み。出会った人を笑顔にする人間力。児嶋さんに会いたくて訪れる人が多いと納得。自身も笑いすぎて涙目になるほどだった。(三野夏美)