2017年2月22日

空キャンバスに輝く夢


人工流れ星事業に取り組む「ALE」CEO
岡島 礼奈さん(38)=鳥取市出身=

 宇宙エンターテインメントの裾野を広げようと、人工流れ星事業に取り組む「ALE(エール)」の最高経営責任者(CEO)、岡島礼奈さん(38)=鳥取市出身。2018年後半に人工衛星を打ち上げ、19年に広島県瀬戸内周辺の上空で、民間では世界初となる人工流れ星を発生させるプロジェクトを手掛けている。「地元に近い中国地方の空で初チャレンジができることがうれしい」と意気込む。

 人工流れ星は、人工衛星に搭載した装置から「流れ星のもと」となる直径1~2センチのビー玉ほどの特殊な金属の粒を放出。大気圏で光を放ちながら燃えることで夜空を彩る。「流れ星が好きな時に、好きな場所で、好きな人と見られたら…」という壮大なロマンがプロジェクトには詰まっている。

 岡島さんが宇宙への夢を抱き始めたきっかけは、愛読書との出合い。小学生で「アトム博士の相対性理論」を、中学になると「ホーキングの宇宙論」に夢中になった。「星座よりも宇宙の成り立ちや重力、どこにブラックホールがあるかに関心が向き、物理の世界に思いをはせるとワクワクした」。深掘りし共通の原理を知ることに知的探求心が湧き、いつしか宇宙物理学者を志すように。夢の実現に向け、研究環境が充実した東京大学に進学した。

■天然流れ星の原理を活用

 大学在学中、サイエンスを使ったエンターテインメントの会社を起業。一方で、天文学の研究には巨額の公的資金がかかる現実を目の当たりにした。周囲からは「天文学って一体何に役立つのか」と心ない言葉をかけられたこともある。

 模索していた2001年、千葉でしし座流星群を、翌年に地元の鳥取砂丘でペルセウス座流星群を見てアイデアが浮かんだ。「天然の流れ星の原理を生かせば、人の手でも流せるのでは」。科学と天文学の発展、そしてエンターテインメントの両輪で収益が上がるようなビジネスをしようと心に決めた。

 大学卒業後は「金融知識と投資家の考え、海外の異文化を学びたい」と、ゴールドマン・サックス証券などでノウハウを学びキャリアを積んだ。そして長男を妊娠中の11年9月、ALEを立ち上げた。

■今のままで頑張れば世界一

 賛同してくれる仲間にも恵まれ、これまで歩みに不安を抱くことはなかったという。「今のままで頑張れば“世界一”。とにかく先を越されたくなかった」と言い切る。

 昨年夏、中学の同級生のママ友と子ども連れで大山へキャンプに出かけ、流れ星や天の川が澄み切った夜空を彩る光景に思いは加速した。「広大な空をキャンバスに一緒に盛り上がりましょう。空を見上げるのは健康にも美容にもいいんですよ」-。多くの人の瞳に流れ星が映り込む日が待ち遠しい。

 ○…壮大に広がる空や宇宙に思いをはせる人は多いだろう。人工流れ星の実現に奔走する岡島さんを知ったのは一昨年秋。その後、鳥取の講演会を拝聴し、取材してみたい気持ちが高鳴った。新調したばかりという夜景がプリントされたスーツに身を包み、丁寧に熱い思いを語る瞳は輝いていた。5歳と1歳になる2人の息子の話に触れると、母としてのやわらかな笑顔に。長男は、大人は一人一機ずつ人工衛星を持っていると思い込み「これはママの?パパのはどれ?」と尋ねることもあるとか。「ロケットには興味を示すけれど、今はまだ地上の乗り物かな」と顔をほころばせる。起業家として母として、今後のさらなる展開と活躍が鳥取の人を元気にするだろう。(三野夏美)