2017年7月26日

親子で絵本楽しんで


え本の会「梟」を主宰
松田 和代さん=倉吉市=

 倉吉市内で乳幼児や母親らを対象に絵本の読み聞かせを始めて27年。「え本の会『梟(ふくろう)』」を主宰する松田和代さん(同市新町3丁目)は、「上手でなくていいの。親子で一緒に楽しく読んで」と語りかける。

■絵本で仲間づくり

 県外から嫁ぎ、3人の子どもを育てる中で、周囲には同じ年頃の子どもが少なく、当時はまだ、平日に乳幼児を連れて出かける場所もなかった。それならば好きな絵本で仲間をつくろうと、市立図書館の協力を得て、絵本を持ち寄り、近くの公民館で始めたのが「梟」のスタートだった。

 夫の隆(りゅう)さん(59)は小児科医。子どもたちが成長し小学校や幼稚園に通い始めた頃、隆さんから「健診で会う子どものテレビやビデオの視聴時間が長い」と、危惧する思いを聞いた。

 「お母さんたちに“絵本も楽しいよ”って伝えたい」。隆さんが医院横に整備したRホールに「梟」の拠点を移すことにした。

 読み聞かせのほか、パネルシアターや季節(行事)遊びを取り入れ、定期的に開催して活動を本格化。協力してくれるスタッフもでき、20組以上の親子が参加することもある。

■社会進出の場

 密接な子育て期間が一段落すると、ほとんどのお母さんたちは元の職場などへ戻っていく。松田さんは「自分には結婚前までのキャリアを生かせる場所がない」というジレンマがあったという。

 「『梟』は奉仕ではなく、私にとって社会と関わる場。私自身も楽しんでいる」と話す。「来てくれた子どもが笑顔になってくれる。やがて母になった子どもが自分の子どもと一緒に来てくれる。やってよかったと実感する」と喜ぶ。

■やまない向上心

 「梟」だけでなく、小学校や図書館への読み聞かせのボランティアをする一方、絵本への探究心を忘れない。

 絵本学会(東京都)に所属し、研究者や作家、編集者などさまざまな領域の専門家らと肩を並べ、絵本を追究。同学会が発行する「絵本BOOKEND2017」に、現在注目されている科学絵本について寄稿した。長年にわたる読み聞かせの経験に基づき、心も体も成長する乳幼児期に絵本の果たす役割について触れ、お勧めの15冊を選書した。

 兵庫県のNPO法人「絵本で子育て」センターが主催する「絵本講師・養成講座」を受講。絵本と子育ての関係性を体系的に学び、絵本講師の資格を得た。同センターによるとこれまで約1500人が受講、県内では松田さんを含め2人のみだ。

 松田さんは「教育的な視点で絵本を選ぶのではなく、一緒に楽しく読むことが一番。ぬくもりが伝わることで親子の絆が強まる。読み聞かせはなにより家庭からが大切」と自分の考えに確信が持てたという。

■確かな手応え

 「梟」の活動を本格化させたころ、各市町村ではブックスタートを開始。さまざまなところで成果が表れていると実感。ただ、絵本好きとそうでない親の二極化は現実にある。「活動を続け一人でも多くの人に絵本の楽しさを伝えたい。絵本は大人にもいろんな気づきを与えてくれる。ぜひ、大人も手に取って」と呼び掛ける。

 ○…松田さんを一言で表すと「かわいい人」。ご主人やお子さんたちのことを話すときの松田さんは愛情であふれている。驚くのは“乗り”がいいこと。未来ウオークで40キロコースを歩きましょうと誘ったら、即OK。普段歩いているわけでもない向こう見ずな2人…。35キロ付近でスタッフに「時間制限です」と強制収容されたとき、松田さんは「歩きたい」と抵抗(笑)。お医者さんの奥さまで、住む世界が違うと思っていたのに面白い! 何より尊敬するところは、何に対しても一生懸命なこと。いいかげんに生きてはならないと刺激を与えてくれる。(吉浦雅子)

元気の源 子どもの笑顔

 元気の源は「赤ちゃんの笑顔!」ときっぱり。40代後半から体調を崩し、高齢の両親の介護も必要とされるなか、「梟」の会は休まずに続けてきた。お母さんたちからの「Rホールに来ると子どもも自分も笑顔になれる」「絵本の良さが分かった」などメッセージにも励まされるとも。「元気な限り続けていきたい。Rホールに来て癒やされてほしい」と呼び掛ける。