2017年8月30日

快適な住空間と夢 形に


桜や建築設計工房 代表取締役社長
来田 裕子さん=鳥取市=

 健康で快適な住空間を手掛ける「桜や建築設計工房」(鳥取市雲山)の代表取締役社長で、一級建築士の来田裕子さん(54)。JR鳥取駅前風紋広場のトイレ設計デザインを手掛けるなど、子育ての経験や女性の視点を取り入れた建築物は、幅広い層から支持されている。

■父の姿に憧れ

 出身地の福井市内で工務店を経営する建築士の父の背中を見て育った。遊び道具は間取りの模型や木片パズル。完成した物件の見学にも同行し、父の達成感に包まれた表情を見て、幼心にも憧れを抱いた。「建築士を目指すのは自然な流れだった」と振り返る。

 「同志」として信頼を寄せる夫の信浩さん(54)=若桜町出身=とは大学の同級生。授業の一環でタッグを組んだ設計で最優秀賞を射止めたことも。大学院修了後は、大阪で別々の設計事務所に就職し、26歳で結婚した。

 「将来は一緒に設計事務所を開こう」を合言葉に励まし合いながら、15年間現場で経験を重ねた。起業をかなえるために、20代でインテリアコーディネーターをはじめとするさまざまな資格取得にも挑戦。2002年、鳥取で「桜や建築設計工房」の看板を掲げ、08年に法人化にこぎ着けた。

■開放感こだわり

 「鳥取は風通しがよく、快適な暮らしができる土地柄。風や視線の流れ、家具配置の工夫次第で、小さな家でも心地いい暮らしが実現できる夢の宝庫なんです」と来田さん。

 こだわりは、空間と視覚的に開放感が感じられる設計だ。中でも、来田さんが設計するキッチンやトイレまわりなどは、「使い手に寄り添う思いが共有できる」と評判。

 管理建築士の信浩さんと二枚看板の形態を取るなど工夫を重ね、「家を建てるのは人生の一大イベント。たとえ小さな依頼であっても、仕事は丁寧に引き受けよう」と決意。施工主と入念なコミュニケーションをとり、住む人のライフスタイルや使い勝手、自身の子育ての経験値などもふまえながら、丁寧な説明やアドバイスを心掛けてきた。

 起業当初は、幼い子どもをおんぶして現場を走り回る毎日だったが、その懇切丁寧な仕事ぶりに信頼も集まった。起業して15年。鳥取でこれまで手掛けた物件は200棟を超えた。「自分が設計し手掛けた建物が形として残るのがうれしい。物件一つ一つに物語があり、子どものようにいとおしい」という。

 今では、物件が完成すると真っ先に成長した2人の娘に見せる。「前よりはよくなったね」「ここはどうなってるの」と質問されることも。現在、長女は大学で建築を学び、高校生の次女も建築家を目指しているといい、「将来が楽しみ」と喜ぶ。

■女性の活動応援

 さらに精力的に取り組んでいるのが、一人の女性経営者として、女性たちの起業や再就職などを応援する活動だ。ハローワークマザーズサロンとっとりの再就職セミナーなどの講師も務める。

 今月22日に市内で開かれた片付け術セミナーでは、来田さんが講師となり、冷蔵庫や食器棚の整理方法や収納術についてアドバイス。参加者は熱心に学んでいた。

 「日々をいかに快適に暮らすかは工夫次第。夢を託された私たちは、その思いを期待以上の形に仕上げて、多くの人の笑顔を引き出すことができる。それが大きな魅力です」。輝く瞳に熱い思いが湧きあがった。

 ○…初対面なのに、快活な会話と笑いで心を和ませてくれる来田さんの人柄にあっという間に魅了された。以前から興味のあった職種の女性建築家。建築家の枠にとどまらないネットワーク構築に励む来田さんだからこそ、人が集い笑顔にできるのだろう。料理も短時間で仕上げるのが得意。大学時代には学食メニューコンクールで優勝経験もあるとか。取材中に頂いたシソジュースも絶品だった。ご自宅を案内していただいたが、さわやかな空間芸術にマイホームへの憧れがますます募った。(三野夏美)

元気の源 異業種の仲間との活動

 2004年に参加した起業セミナーで開眼し、その参加者有志で立ち上げた「TORI-WOMAN」の代表としての活動が元気の源。20代から50代までの異業種の約40人が所属。情報交換、会話術や時間を有効に使う手帳の活用方法などのセミナー開催、季刊誌の発行などを行っている。日常の豆知識、快適な暮らしのこつなどをシェアできるのが楽しみ。多方面で生き生きとがんばる仲間とのつながりは、知識や知恵を豊かにしてくれる貴重な学びの機会。信頼できる仲間との何げない会話も心のサプリ。