天国と地獄
昨晩、NHKのBSで黒澤明監督の『天国と地獄』をアンコール放映していました。誘拐事件を扱ったサスペンス映画で見るのは二度目になりますが、ストーリーの面白さ、テンポの良さ、スタイリッシュなモノクロ映像に引き込まれました。
黒澤映画では、往年の名俳優たちの若いころの姿を見ることが楽しみの一つですが、犯人役の医学生になった山崎努の怪演には目を見張りました。社会からの疎外感やニヒリズムを細い身体に漂わせ、最後の場面で被害者の三船敏郎と面会する場面で見せた人間の弱さなどとても印象に残りました。
映画では丘の上の豪邸(天国)と、下界の古い安アパート(地獄)の対比が象徴的に描かれていますが、この映画が封切られたのは1963年ですから、ちょうど戦後の高度成長期。安アパートに住む者も、いずれは一軒家を持つ夢が持てた時代です。翻って今の格差社会を考えると、子供が親の世代よりいい生活が期待できず、将来への希望を持ちにくい点でより深刻です。(Q)