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「平井知事VS片山前知事」に思う

 平井伸治知事が開会中の県議会本会議で、片山善博前知事の定期貨客船や医師退職問題での発言に対して強い不快感を示した「片山節に知事怒る」の記事が大きな反響を呼んでいます。本紙などが加盟する「47ニュース」の参加新聞社記事ランキングでアクセス数が全国のニュースの中で第2位(28日午後8時現在)。これには質問した自民党県議も驚いていました。

 〝対立〟の原因は、先月米子市であった講演会で片山氏が鳥大医学部付属病院救命救急センターの医師の退職問題と県の環日本海定期貨客船支援を関連付けて「船にお金を出すより、医療にお金を出して」と定期貨客船への支援を批判したこと。長年仕えてきた元上司の〝一刺し〟に、平井知事は本会議で大学関係者の声を引き合いに片山発言の〝筋違い〟を指摘しました。                                                      
 記者からの一報に、「決別宣言」が浮かびました。思うに、平井氏が知事選に出たころから、二人の間には〝すきま風〟が吹くようになったと思います。かつて「片山・平井コンビ」で県政改革に奔走した当時とは、まったく状況が違っています。その背景には、平井知事誕生後、前知事がさまざまな場面で現知事の取り組みに〝チャチャ〟を入れていることがあります。今回原因となった講演会での発言もその一つです。
 平井知事も当初は、前知事を〝よく知っている〟だけに、「また言ってるわ」ぐらいの感覚だったでしょうが、さすがにたびたび続くと、堪忍袋の緒が切れ、それが議場で質問を受ける形での「不快発言」になったと思います。温厚な性格の平井知事が、片山氏のことを「鳥大に籍のある教官から…」と言ってるところに怒りが伝わってきます。では、なぜ平井知事が元上司に不快感を示すに至ったのでしょう。
 片山知事という、非常にインパクトのあった知事の後、どんな県政を推し進めていくか。部下としてその手法を目の当たりにしてきた平井知事は、選挙に出るにあたって考えたと思います。その結論がマニフェストにあった「改革の果実を県民のものとする」でした。どんなに注目されても、筋論を言ってみても、県民が豊かにならねばならない。そして選挙戦のテーマに、この鳥取県では最も難しい「経済の活性化」を掲げました。
 対岸諸国との人やモノの交流を生む定期貨客船はまさにその切り札で、中海圏域の4市や民間と連携し実現へ走ってきました。その思いは現役時代、環日本海交流の大切さを訴えてきた片山氏もよく分かると思います。行政のかかわり方、結果を出すことの難しさも。一方、予算面も含め県が医療施策をおろそかにしていないことも。それだけに、平井知事にとっては今回の片山発言は「心外」だったのでしょう。
 
 私は、知事選後の二人の間柄に「難しいもの」を感じてきました。
 片山氏は言うまでもなく、優秀な人です。改革派知事と呼ばれ、辞めて大学教授になってもたびたびメディアで取り上げられます。知事時代から、そして今も「歯に衣着せぬ」発言が注目されています。たぶん今回も、現職の時同様「思ったことを率直に言っている」のだと思います。ただ、知事時代からその発言は痛快さと不快感が紙一重でした。
 一方、通常は現職を退いたら、「その後」についてはあれこれ口を挟まないものです。西尾邑次元知事は辞められてから、片山知事に「過去」の県政を批判されても、黙して語らずでした。町長も辞めればただの人、農作業に従事し現町政を見守ります。ただ、こういう通例は、片山氏には当てはまらないのでしょう。かつて自らを支えてくれた元部下でも。その点では「過去の人」にはなれないのかもしれません。
 もちろん片山氏には発言に対する「信念」があることは分かります。しかし、あれだけ韓国江原道との交流を進めた片山氏が、韓国からの試験就航のお客さんを迎える前日に言うことかなと率直に思いました。
 もう一つの懸念は、値打ちを下げることになるのでないか、ということ。たぶん今回、県議の中にも「よく言った。さすが片山」という人は少ないと思います。片山氏は現場主義を唱えましたが、辞められる前ぐらいから現場の空気は変わっていました。理屈よりもジゲのことを、と。今回、発言は喝采されるでしょうか。特に政財界に片山氏の支持者が多くいた県西部で。さらに言えばこの間の、自ら県民の中に入っていく、県経済の立て直しに奔走する平井知事の姿勢への共感が県内に広がっており、片山氏は好むと好まざるとにかかわらず「過去の人」ととらえられています。でも、これは仕方ないことだと思います。一方、平井知事にとってはその「過去の人」を意識せざるを得ない部分がまだあるのかもしれません。
 
 いずれにしろ、〝いまの姿〟は残念に思います。かつての関係を知る県幹部の中には「何でこんなことになったんだ」と思う人も多いでしょう。新旧トップの〝口撃〟合戦に、人間関係の難しさを痛感しました。(鵜) 

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