鞆の浦
しずくが岩をうがつ。鞆の浦(広島県福山市)の埋め立て問題で差し止め判断が出された記事を読んでそんな印象を抱きました。しずくの大きな一滴に中海・本庄工区の干陸中止があるからです。
本庄工区干陸。正確には国営中海土地改良事業です。大根島から島根半島にかけて干拓し、巨大な農地を造成。さらに農業用水として中海と宍道湖を淡水化して使用する付属事業がセットになっていました。食料大増産が目的で、出雲神話にちなんで昭和の国引きと呼ばれました。しかし、その後の社会情勢の変化で、米は余ることに。大規模な米作地は不要になっていきました。計画立案から長い時間がたち、事情が変わっても続く公共事業をどうするのか。人々は中止を唱え始め、有名な人間の鎖などのデモンストレーションで世論を喚起しました。結果、政府も中止を選択したのです。それから各地で公共工事の勇気ある中止が相次ぎ、ブレーキの壊れたダンプカーと呼ばれた公共工事は、その姿を変えました。当然、民主党政権が打ち出すダム工事の中断も、底流には中海の中断があります。
景観を国民の利益と考えることが、司法の判断で示される時代が来ました。そのことをかみしめると、あらためて中海の中止判断が歴史の曲がり角だったと思えてくるのです。(理)