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2010年10月24日

苦悩する知事

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高速道路ネットワーク形成に向けて政策提言した後、共同会見でミッシングリンク(欠落個所)の解消を訴える平井知事(中央)=20日、国交省
 平井知事が苦悩している。来春の県知事選への対応を巡ってだ。自民か民主かの政党とのかかわり方が指摘され、再選出馬が既定路線のように言われるが、知事の心はもっと深い悩みの淵にあるのではないか。
 自民か民主か、どちらに乗るか(推薦をもらうか)が難しい理由は、政権与党は民主党だが鳥取県では支援団体も含め自民党の力が強いことにある。前回、知事は自民と公明の推薦をもらって戦った。この延長線上でいけば、今回も自民が抱えると見る向きが多いし、実際、自民系県議からも「平井はこっち」という声が上がる。
 前回は平井氏の擁立を巡り、自民県議らの間で対立が生まれ、別の候補の擁立を目指す動きもあったが、現状ではそんなことはあり得ない。県民から人気の高い知事であることは分かっており、てんびんにかけることなどできない存在になった。前回も一部見られたが、自らの県議選と絡めて〝セット売り(平井人気に便乗)〟したいぐらいだ。その点でも自民は平井知事を抱えておきたいし、妙な安心感もある。
 これに対し、民主は複雑だ。大方は平井知事には対立候補を立てない、との考えのようだ。実際、平井知事は就任後、民主党や連合ともいい関係を築いており、県議らも県政運営を評価している。その中で、仮に自民が抱えても自主投票でいい、との声もある。というのは、県連の最重要課題は党勢基盤の確立。そのため県議選にも多くの候補を擁立する考えである。いま大切なのはそれらの当選に全力を挙げることで、とても平井知事に対抗馬を立てる余裕はない。実際のところ、勝てる保証はないし、いまの県連では人もカネも票もは無理だ。
 半面、一部に自民との相乗りに否定的な考えもある。政党は選挙で候補を擁立してこそ存在意義を発揮できるし、そうでないと弱体化する。小沢一郎元代表の持論でもある。その中で、民主側が〝最善〟と考えるのが平井知事の「県民党」での出馬だ。
 ニューヨークにいた平井氏に知事選への出馬を呼び掛けたNPO関係者や経済人らは当選後、勝手連的な支援組織をつくって定期的に会合を開いている。いわゆる熱心な平井支持者である。その中に、2期目を目指すにあたって「県民党」での出馬を求める声が出ている。要は平井知事が再選出馬しやすい環境をつくろうとの考えで、県中部ではすでに水面下でその動きも起こっている。これは決して政党を否定するものではないし、現実的に仕事を抱える民間人が選挙の本体を担うことなどできない。
 こうなると民主も乗りやすい。自民県連幹部からもなかなか表明できない知事に「平井さんのイメージを考えると、政党が一歩引いた方がよいのではないか」との声もある。ただし、実際、どのような姿の「県民党」になるのか、相乗り的なことを自民が許すのか、仮にそうなっても選挙戦に自民と民主がどう絡むのかは不透明だ。
 外野はうるさい。知事の再選出馬は当然のことのように言われているが、実際のところ平井知事の本心はどうなのか。知事は9月議会前に本紙の取材に対し、「熟慮中」と答えている。その言葉にうそはないと思うし、初当選時のマニフェスト(公約)を点検し、県民の声を聞いた上で最終判断する考えでもあった。が、9月議会では見送った。
 知事は「私はこんなことは苦手なんですよ」と言う。政治的な駆け引きなどとてもできない。くそが付くぐらいまじめでもある。1期目を自ら検証する中で、「本当にこのまま私が知事を続けて、鳥取県のためになるのか」との思いがありはしないか。悩みの淵に入り込む理由でもある。
 現実的に、この鳥取県で、いまの経済情勢で、成果や結果を出すのは大変なことだ。平井知事には、理屈や筋論を言うだけでなく、鳥取県を豊かにしたいとの思いが人一倍強い。また、それが大命題だ。そのため、自らが外に出て動き回る。さまざまな取り組みで県民にチャンスを提供する。一方、その思いを共有できない職員やお役所仕事を厳しく叱責する。
 知事はこの3年半、ほとんど休みを取っていない。病気になっても休日にイベントに出掛けた。正直なところ、走り続けてくたくただと思う。一度だけ知事から本音を聞いたことがある。夜、電話で「一生懸命やっているんですけどね…」とポツリ。一つのことを成しても、また次の難題が迫ってくる。もどかしさも感じていた。
 60年代生まれの平井知事は性格的に、物事に執着しない人でもある。私も同世代でよく分かる気がする。たぶん平井知事は、知事というポストに固執しているのではなく、副知事を退任するに当たって「帰らないで」と呼び掛け、「帰ってこい」と知事選へのエールを送った県民や鳥取県に恋しているのだと思う。
 知事選まであと5カ月。結局のところ、平井知事に次もやってもらいたいか―。声を上げるのは政党ではなく、県民ではないか。(鵜)