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「東京日記」2010→2011

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劇団「座・がいな」のメンバー
 ことしも残すところ4日。政治の劣化を見せつけられた2010年が終わろうとしている。2011年はどんな年になるのか、特に経済の展望が開けるのか、気になるところだ。
 個人的には、初めて営業の仕事に携わることになり、編集や報道現場とのカルチャーの違いを感じるとともに、国会取材などでこれまでにない経験をし、刺激的な年でもあった。
 かつて都会からUターンした際、当然のことながら都会と田舎の違いを感じた。価値観はあろうが、文化的なことの享受という点ではかなり差があるように思った。文化も多種多様だが、都会では一流に触れる機会が多い。その感覚も地元で奮闘する人々を取材する中で薄れていったのだが、再び上京してみて、やはり恵まれていることは確かだ。ただ、先日、面白い仕掛けを考えている人たちに会った。芝居をベースに、東京から地方、地元の鳥取県中部にベクトルを向けている。
 倉吉市下福田出身の山崎靖明さんは33年前、「劇団影法師」、さらに23年前には「笑う猫」を立ち上げ、全国各地で公演活動を続けている。都内に大きなスタジオを持ち、その世界では名が通った人だ。同じ地元でもあり、存在は知っていた。ひょんなことから電話がかかってきて、武蔵野の事務所におじゃました。
 待つ間、芝居の練習を見学した。それが1月8日から30日まで三朝温泉の三朝館で上演する「みっつの谷伝説」。演じるのは「座・がいな」のメンバーで、山崎さんがプロデューサーを務める。
 プロの劇団「座・がいな」は倉吉市で旗揚げされ、団員は県中部在住者らを募った。というか「雇用する」と考えている。「プロ劇団」という誘致企業が、地元の若者を採用し雇用に貢献すると同時に、芝居という文化を持って地域を元気にしようとしている。
 山崎さんの発想の素晴らしい点は、文化・芸術を産業とリンクさせようとしている点だ。そのことで地域が前進したり、活性化につながるのではないかと考えている。「座・がいな」プロジェクトはその実験であり、地域住民にまず文化・芸術に触れて楽しんでもらいたいという。住民が自らのライフスタイルに文化を取り入れてそれをプラス要因とすることで、地域の創造が生まれ、地場産業が豊かになれば、挑戦する心が芽生えてくると考える。
 もう一つ、山崎さんの主張の特徴は、これからは大都市ではなく、地方の方がいいものが生まれやすいとの発想だ。山も川も緑も空気も古い町並みも、すべてが舞台となる。三朝という温泉地で、しかも旅館の大広間を使った、地域に伝わる伝説をモチーフにした芝居はその実験の第一弾。宿泊客のみならず、地元の人が入浴料のみで、温泉につかって芝居を楽しむことができる。その繰り返しの中で、三朝の本通りにかつてのようなにぎわいを取り戻そうとしている。
 倉吉市も「文化」を考えたことがある。文化ホール「未来中心」を造る際にはさまざまな議論があった。地域おこしや教育環境の整備には不可欠との意見、半面「文化では飯は食えない」との声もあった。ただ、景気が長期低迷し民活が期待できなくなった今、文化を雇用や産業、地域活性化に結び付けようとする山崎さんの郷土愛には納得するものがある。また、口だけではなく、実際に行動に移しており、協力したくなる。
 かつて倉吉は文化が栄えたまちだった。稲扱き千歯を全国に売りに歩いた商人は、その各地の文化を倉吉に持って帰り、住民たちは最先端の文化に触れていた。青年団活動も活発で農家のせがれが芝居の舞台に立った。その芸能好きは今も引き継がれ、地域の伝統芸能や女性会活動なども活発だ。
 研修を経て「座・がいな」に雇用された団員たちは今後、倉吉市を拠点に各地で公演活動を行っていく。東京の日比谷で見る演劇やミュージカルもいいが、「倉吉発」の芝居が喝采を浴びる、そう考えると、2011年が明るいものに思えてくる。(鵜)