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なぜここまで頑張れるか

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吉本新喜劇の舞台に立った平井知事
 平井伸治知事がダウンした。直接の原因はインフルエンザのようだが、年末年始の雪害対策など過労も要因だろう。大阪の吉本新喜劇に出演し、とんぼ返りで再び雪害対策。正月も休む暇がなかった。というか就任以降、休日もイベントへの出席などでほとんど休みを取っていない。たぶん、体はくたくただと思う。なぜ、知事はここまで頑張れるのか。
 今だから言えるが、平井知事のダウンは就任後、2回目だ。1度目はブラジル出張から帰国後。十二指腸潰瘍を患い、体に黄疸ができた。知事日誌には内部協議とあったが、知事室を抜け出し中央病院で点滴を受けていた。そんな状態でも休まない。秘書が休日の催しへの出席キャンセルの話をしても、「もう少しで盆休みだから。そうしたら家族で過ごせる」と振り切って出て行った。就任から1年半後、初めて連休を取った。こんな知事はまずいない。 
 知事は若くして父親を亡くしたからか、健康にも気を配っている。酒もたばこもやらない。息子2人は県外に住んでおり、私邸に妻と二人きり。祝賀会に出席しても、帰ってから議会の議案資料に目を通すぐらい優等生だ。基本的にまじめ人間だ。
 東京の神田で生まれ、子どものころは秋葉原などで遊んだ。父は弁護士。頭がよく有名私学の開成中―開成高から現役で東大法学部に進学。卒業後は自治省に入り、米国のUCLAにも留学。片山前知事の下で全国最年少で副知事に就任した。絵に描いたようなエリート人生だ。半面、スポーツは大の苦手。おしゃれのセンスはない。好きな食べ物はオムライスとコーヒー牛乳という庶民派の面も持つ。
 知事を支援してきた経済人らは「官僚臭さがなかった」と話す。東京育ちのエリートだが、副知事時代から上から目線ではなく、謙虚。フランクに話せ、人の話をよく聞いてくれる。これまでの官、鳥取県庁にはいないタイプであった。講演に行ってもその後の懇親会で仲良くなる。必ず顔と名前を覚える。目線が同じで民間に近い感覚を持っている。これで一発でファンになる。ある面、人たらしだ。
 一方、庁内の評価は少し違っている。部下には強烈に厳しい。片山県政時代、職員は知事室に入るより、副知事室に入ることを恐れていた。では、なぜそこまで叱るのか。平井知事は県職員が民間や県民に対して横柄な態度をとることをものすごく嫌っていた。県民の目線で仕事をしない、基本が分かっていない職員は相手にしない。県職員の仕事が理解できていないということだ。
 ただ、職員には能力差もある。頭の回転が早い知事と違って、一つのことをやるにも時間がかかる職員もいる。全員が知事のように達者ではない。成果も出ない。職員の一部は、庁外の県民に見せる顔と庁内での対応の二面性に戸惑い、それが評価を分ける。
 しかし、知事には信念があるのだと思う。この鳥取県のトップとしての。それはどのように形成されたのか。
 面白いものである。優等生であれだけまじめな平井知事が大阪の吉本新喜劇の舞台に立ち、眉毛を太くし笑われる側を演じる。確かに「二面性」がある。パフォーマンスもやり、新聞やテレビに取り上げられることが好きだが、不得手なことをやっているように感じる。テレビカメラの前でラーメンを食べてみたり、県内企業が生産した商品を上手にほめてみたり。知事がここまでしないといけないのかとも思う。
 別の優等生の片山前知事なら絶対やらない。それをなぜできるのか。根底には、経済への踏み込んだ考え方がある。線引きをしていても始まらない、鳥取県を豊かにしたい。関西連携の中で大阪に売り込んだり、食のみやこをアピールしたり、県内の民間企業を元気にしたり、そのためには何でもする、私を上手に利用してもらったらよい、との考えだ。
 半面、今回の雪害対策で見せたように県民の生命と財産を守るためなら全力を挙げる。議会や各種団体とも良好な関係を築く中で政策的なことはきちっとやっていく。その点では片山前知事とも東国原前宮崎県知事とも橋下大阪府知事とも違う。平井流であり、この指とまれ、一緒になって鳥取県を良くしようやという考えが念頭にある。ただ、知事だけが走り回り今回のようにダウンしている。その点では肝心の県庁の総合力はまだ発揮できていないのだが。
 では、何が知事を突き動かすのか。これについては私見だが、初出馬時の自らの体験がベースにあると思う。自民党の候補になかなかならしてもらえなかった自分。順風満帆にきた人生だったが、その時に胸に突き刺さったものがあり、それを超えるため頑張る。当時、知事は「鳥取県に命をささげる」と言ったが、本心だったと思う。だから、病気をしても休もうとしない、休んでいられない。推測の域を出ないのだが、知事には将来、ぜひ本を書いてこの点を説明してもらいたい。知事経験者の地方自治の教科書のような本よりも、よほど読み応えがあろう。
 「熱が下がった」ということで平井知事は12日夜上京し、13日午前に激甚災害指定の要件緩和を各省庁に要望した。相変わらず休まない。(鵜)