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決 勝
2008年07月22日の紙面から
最終日 鳥取西、3年ぶり甲子園
「第90回全国高校野球選手権記念鳥取大会」の最終日は21日、倉吉市営野球場で決勝を行った。ノーシードから勝ち上がった鳥取西が2−1で第2シードの鳥取城北に逆転勝ちし、3年ぶり23度目の夏の甲子園出場を決めた。
鳥取西・鈴木、鳥取城北・木島の投手戦となった決勝。鳥取西は1点をリードされて迎えた九回、一死から鈴木、壱岐の連続安打で一死一、三塁の好機に小畑が左中間を破る適時二塁打を放ち、土壇場で逆転に成功した。その裏、鈴木が先頭打者に安打を許したが後続を打ち取った。
初の甲子園出場を目指した鳥取城北はピンチをしのいだ六回、二死二塁から谷掛の右翼線適時二塁打で先制。木島を中心に鳥取西打線を抑えていたが、九回に力尽きた。
鳥取西
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鳥城北
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| 鳥取西―鳥取城北 鳥取西は九回、小畑の適時2塁打で壱岐(右)が逆転のホームを踏み、ナインと喜び合う=倉吉市営野球場 |
〇…鳥取西が九回に小畑の逆転二塁打で試合をひっくり返し、鳥取城北との投手戦を制した。
八回まで壱岐の内野安打1本に抑えられていた鳥取西のクリーンアップが土壇場の九回に力を見せた。一死から鈴木、壱岐の連打で一、三塁。続く小畑が2人をかえす左中間越え二塁打を放ち、執念の3連打で逆転した。
鈴木は六回に適時打で1点先制されたものの、左腕から威力のある球で8奪三振。バックも無失策と堅守を見せ、劇的な逆転につなげた。
鳥取城北は木島が変化球を武器に好投。六回一死二、三塁のピンチに最後は壱岐を見逃し三振に打ち取るなど、気迫の投球で八回まで零封した。六回に機動力を使って攻め、谷掛の右翼適時二塁打で1点を奪取。勝利目前までこぎ着けたが、最後は鳥取西の打力が勝った。
バットでけん引「背番号1」 鳥取西・小畑
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| 鳥取西−鳥取城北 鳥取西は九回一死一、三塁で小畑が左中間を破る2点適時二塁打を放ち、逆転に成功=倉吉市営野球場 |
マウンドに立てなかった背番号1のひと振りが、逆境のチームを生き返らせ、鳥取西を23度目の夏の甲子園に導いた。
小畑は7月上旬、左股(こ)関節を疲労骨折し、一時は立つことすらできない状態だった。「ダメかも」と弱気になることもあったが、主将という立場から、落ち込んだ顔を仲間には見せなかった。
迎えた最後の夏。マウンドに立つ鈴木を「打撃と守備で助けよう」。そう心に決め、自分を奮い立たせた。
決勝。六回に1失点。相手投手の外角低めに集める粘り強い投球に、打線は沈黙していた。「ひょっとしたら完封されるかも」。不安がよぎった。
「ピンチになったらおまえでいく」。西村監督から言われていたが、初戦から力投を続けた鈴木に「ここまでおまえが(試合を)つくったんだ。自分で投げろ」とマウンドを託した。仲間にも「練習はもっとえらかった。頑張ろう」と声を掛け、笑顔で盛り上げた。
九回に試合を決める見せ場が訪れた。一死一、三塁に「いかないけん」。気合を込め、左中間を破る2点適時打を放った。鈴木と壱岐をかえし、自分も二塁をけって三塁に向かったがアウト。果敢にもう1点狙う姿勢を見せたが、「あれは暴走です」と照れた。
八頭が1勝した選抜が脳裏に鮮烈に残っている。小畑は「世間から八頭が出た方がよかったと言われないように」。甲子園初戦突破に闘志を燃やした。
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「胸を張れるチームです」 鳥取城北・吉本捕手
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| 「ピンチの後には必ずチャンスがくるから」。常に笑顔でエース木島(左)をもり立てた吉本(右)の心には「感謝」の2文字があふれている=倉吉市営野球場 |
「自分の笑顔でみんながリラックスできるなら」。最後まで、主将は気丈に笑顔を見せた。一瞬、ぽつりと降った雨は心の涙か。スタンドに一礼した後、顔を上げられなかった。抱きかかえられた吉本の目には、うっすら涙が光っていた。
秋初戦で青谷に敗退。自信は打ち砕かれた。バラバラになりかけたチームをまとめる自信がなくなった。「キャプテンをやめたい」。石川監督に打ち明けた。監督は言った。「今が限界か? 限界から1歩でも半歩でも踏み出してみろ」。もっと強くなれ。そう訴える監督の言葉に、吉本の心は決まった。
大会直前の練習試合。木島の投球に腹が立った。「こんな弱気なピッチングでどうする!」。試合中にどやしたて、ベンチに戻って監督に直訴した。「木島を代えてください」。温厚な吉本の思いもよらない行動に、木島も石川監督もあぜんとした。
1年から人の2倍も3倍も練習してきた木島の姿を見ている。思うように投げられず悩む胸の内も知っていた。だから今、言わなければと思った。「ここまで来たんだ。開き直って思い切り投げてみろよ」。最後の夏。この仲間でもう後悔はしたくなかった。
木島は今大会、決勝の八回まで27イニング無失点の好投。吉本のミットに、全球気迫を込めてぶち込んだ。1−0でリード。夢切符はそこまで来ていた。
九回表、吉本は何度もマウンドに駆け寄った。「ピンチはチャンス。次は必ずチャンスがくるから」。白い歯を見せて木島をもり立てた。が、無情にもスコアボードには「2」が刻まれた。
「自分の(リードの)甘さが出てしまった。ピッチャーが打たれるのはキャッチャーの責任です」。これが自分たちの力。きっぱり言い切った。
神戸市の出身。4歳の時、阪神・淡路大震災で自宅は全壊した。家族は強いきずなで立ち上がった。中2の時に母の病気が分かった。家族思いの吉本は一度は大好きな野球をあきらめかけたが、母の療養に負担をかけまいと寮生活できる高校を選び、石川監督を慕ってこの鳥取に来た。
「何もできなかった自分に、みんなはついてきてくれた」。野球を通じて心の友をつくるのが“石川イズム”。野球ができる喜びを知り、そして「10年、20年後、お酒でもかわしながら話ができる本当の『心球友』ができた」。今の吉本には感謝の気持ちしかない。
「甲子園出場にふさわしいチームになる」。それが主将としての吉本の目標だった。自信を持って言える。「胸を張れるチームです」。日に焼けた顔に、キラリと汗が光っていた。
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