県政に届きにくい住民の声を聴き取り政策に導くため活動する「とっとり若者広聴レンジャー」。学生をはじめ20〜30代の若者21人が任命され、地域に出向いて広聴活動に取り組みます。5つのチームがテーマを持って地域活動に参加し、地域に潜在している声を拾い上げます。拾い上げた地域課題を解決するため、若者目線での議論を重ね、最終的に政策提案につなげるのが「とっとり若者広聴レンジャー」のミッションです。

 鳥取県をより良くするための広聴活動にまい進するレンジャーの活動を紹介します。

» KohnoLabNorthForest+1チーム

取り組みテーマ:耕作放棄地の再生・有効活用(ICTを活用した地域活性化)
 米子市弓浜半島では耕作放棄地について地域住民や行政が悩んでいる。それを解決すべくICTを活用して耕作放棄地の利活用を考えたい。
メンバー:
(上段)左から橋本泰河(米子高専5年)、北野達也(米子高専5年)
(下段)左から松尾雄之介(米子高専5年)、梶本淳(米子高専5年)、上場尋斗(米子高専専攻科1年)

» 生山大學

取り組みテーマ:学生が地域に入りやすくする方策
 生山という地を拠点に耕作放棄地の再生、大学生と地域住民のつながりを作るよう活動している。今の環境を変えていくために学生をいかに地域に入りやすくするのかに重点的に取り組んでいきたい。
メンバー:
左から三村鉄也(鳥取環境大2年)、澤田雄太(鳥取環境大3年)、見上光(鳥取環境大3年)、西川健太(鳥取環境大3年)

» ns.レンジャー奉仕団

取り組みテーマ:「健康」を切り口とした地域活性化方策
 健康を切り口とした地域活性化策を考えていきたい。他のチームとの交流も楽しみにしている。
メンバー:
左から藤井菜央(鳥取看護大2年)、小村彩子(鳥取看護大2年)、井上理子(鳥取看護大2年)、小松美聖(鳥取看護大2年)、以後大騎(鳥取看護大2年)

» おひさま2525八頭

取り組みテーマ:子育てしやすい環境づくり
 子育て中のままのネットワークを活かして「子育て王国とっとり」の中で楽しく、より幸せに子育てができる環境が実現するよう沢山の声を集めたい。
メンバー:
左から黒坂美紗子、中村瑠美、滝波真美

» 1997中山中卒業生

取り組みテーマ:鳥取県の方言の再認識
 40歳を前にして同級生が集まり、地元鳥取県のために何か貢献したいと思い、方言を取り上げようと思った。方言は地域の財産であり、方言の魅力を再認識して、新たな案を行いたい。
メンバー:

子どもの“預かり合い”実践 おひさま2525八頭


スーパーのキッズスペースで、預かり合いを実践する参加者

 子育て世代の声を県政に届けるべく、八頭町で主な活動を行う鳥取市と八頭町の“ママ友”3人組。商業・公共施設のキッズスペースで子どもを見合い、時間差で30分〜2時間の自由時間をつくる「預かり合い」の実現を探っている。

■実践に着手

 約100人に実施したアンケートで、子育て世代が抱える悩みを把握した。「子育てに追われる者同士、助け合える共同体があれば」と思い立ち、「預かり合いコミュニティー」の実践に着手した。

 最初の実践は8月30日、鳥取市内のスーパーで2時間行った。知人に呼び掛け、メンバーを含め6組の親子が参加。1人30分の自由時間は他の5人のママ友に子どもを預けて周辺で買い物をするなど子育てから解放され、身軽になった時間を有意義に活用した。

■手応え十分

 目が離せない子どもが一緒だと、できないこともたくさんある。「30分だったが、書店、百均の店にも立ち寄れたし、お手洗いにもゆっくりいることができた」と参加者たちはそれぞれリフレッシュした様子。「年齢差のある子を見ることで、今後の子育ての参考になった」と仲間づくりや情報交換の場として期待する声も上がり、十分な手応えがあった。

 今秋の政策提言に向けては、場所の開拓や開催日時と参加者をマッチングする仕組みの構築など課題を整理。リーダーの中村瑠美さん(33)は「まずは預けることへの不安を解消するよい手立てがないか」と考えを巡らす。

 19日には八頭町内で、試験的に2回行った実践成果を子育て層に報告し、座談会で取り組みの改善点を探る。当事者目線の政策実現は「子育て王国とっとり」の支援施策に厚みを加えそうだ。(毎月掲載)

過去の連載を読む

地域に飛び込む学生たち 生山大學


定期的に開いている古民家での座談会

 鳥取市生山地区の古民家で共同生活する鳥取環境大の県外出身学生らが「生山大學」(4人)を結成。地域活動を通じて住民と接点を持ち、埋もれている行政課題を探ろうと奮闘中だ。

■政策立案に意欲

 学生にとって地域は実践の場でもある。「地域で活動しやすい仕組みを作りたい」という思いがあり、これをテーマに自由な発想で政策立案できる“広聴レンジャー活動”への参加を決めた。これまでに学生や地域住民ら約100人を取材し、現状把握に努めた。

 メンバーの一人で、耕作放棄地解消のため、生山地区で米作りプロジェクトを主導する見上光さん(21)は「システムが複雑で農地が借りにくい」と指摘。行政には学生と地域の“緩衝材”としての役割を期待しており、そこを改善することで、移住にもつながる政策を立案するつもりだ。

■膝を交えて

 毎週金曜日の夜は、築100年を超える古民家が“座談会”の舞台となる。環境大の学生や教員、時には地方議員が訪れ、地域を良くしたい気持ちをぶつけ合う。

 「公の場にはないラフで、拾いきれないほど意見が噴出する」という。若者が政策提言する「とっとり創生若者円卓会議」にも参加経験があり、4人のまとめ役的存在の沢田雄太さん(20)は、大勢の意思を吸収できるこうした機会が、広聴活動の幅を広げていると実感。今後は「学生が地域の人と直接膝を交え気軽に話ができる場をつくり、両者の意思疎通を促す契機にしたい」と考える。

 生山地区の盆行事にも参加したメンバーたち。地域に飛び込み、課題解決に挑む。(毎月掲載)

耕作放棄地の有効活用を Kohno Lab North Forest+1チーム


「白鳳の郷地域活性化協議会」のメンバーと意見交換する米子高専の学生たち
=6月26日、琴浦町

 コンピューターとロボット制御を学ぶ米子高専(米子市)の学生5人が、ICT(情報通信技術)の活用による耕作放棄地の有効活用をテーマに、広聴活動を続けている。

■アプリ開発視野

 農家の高齢化などで作り手のいない農地が増え続ける地元・弓浜半島を「何とかしたい」と立ち上がった。農地の再生は地域の活力になる。まず思いついたのが土地所有者と作り手をマッチングするアプリの開発だった。

 行政、農家、農業法人、遊休農地で芝生産に取り組むSC鳥取などを訪れ、地域の現状や課題を聴いた。そんな折、「とっとり若者広聴レンジャー」の存在を新聞報道で知った琴浦町の「白鳳(はくほう)の郷(さと)地域活性化協議会」から連絡が入った。

 「若い人と一緒に考えることに意味がある。ぜひ意見交換したい」

■意見交換で学ぶ

 休耕田活用を地域振興のテーマの一つに掲げる同協議会との意見交換会は、6月下旬に実現した。協議会のメンバーからは「農業機械の操作をICTでサポートできないか」「農業は本来理系のもの。感覚ではなくデータを生かし収益を上げることが必要」など、今後政策提言していく上でのヒントを得た。

 耕作放棄地解消へインターネットやアプリを駆使するにしても、土地所有者と作り手のマッチングだけでなく、作業効率や収益性を上げる作り手への支援も重要な視点となることを学んだ。

 チームリーダーの梶本淳さん(19)は「今回は、農家の視点に立った生の意見が聴けた。耕作放棄地解消は簡単ではないが、いろいろな切り口でICTの生かし方を模索していきたい」と意気込む。(毎月中旬掲載)

21人を任命 5チームまちに繰り出す


任命式に出席し、意気込みを語ったメンバーたち=5日、県庁

 県政に届きにくい地域の課題を若者目線で探り、解決策の立案につなげるため、鳥取県は「とっとり若者広聴レンジャー」を任命した。それぞれのテーマを掲げる5チーム(21人)が地域に繰り出し、住民の声に耳を傾ける。未来を担う世代が県政参画の推進力となり、突破口を開けるか。新たな挑戦が始まった。

■知事もエール

 県庁で5日に開かれた任命式。公募して同レンジャーに選ばれた10〜30代の学生、社会人が顔をそろえた。ICTを活用した耕作放棄地の再生、健康を切り口とした地域活性化方策、子育てしやすい環境づくりなど、各チームの活動テーマが披露された。

 広聴活動で使うペン、バッジ、名刺、マイクなどをチームの代表者に手渡した平井伸治知事。「『これはぜひ、やるべきだ』というのが見え、それが実際に世の中に役に立っていくとき、とんでもなく充実感を得られる」と経験談を交え、エールを送った。

■地元に貢献を

 小回りが利く人口最少県の強みを生かし、活動の現場で直接聴いた意見を取り入れて、県政を変えていく発想だ。

 子育て環境の充実を目指す女性は「子育て中のママのネットワークを生かし、同じ立場の私たちが小さな声をたくさん拾い上げていきたい」と意気込む。

 「地域に入るので、地域の方々とのコミュニケーションが大切」と話すのは、耕作放棄地の地権者と担い手をマッチングするアプリ開発に挑む米子高専の学生。「やるからにはいい物をつくる。地元に貢献したい」と固い決意を表明した。(毎月中旬掲載)

若者視点の政策提案へ 県が新制度導入


 鳥取県は本年度、県政に届きにくい住民の声を聴き取り、政策に導く若い“正義の味方”を地域に送り出す。その名も「とっとり若者広聴レンジャー」。地域活動に参加しながら、広聴に使命感を持って取り組む若者たちを9回にわたりリポートする。(毎月中旬掲載)

■行政課題掘り起こし

 往年の戦隊ヒーローをほうふつさせるネーミング。学生ら若者5人程度がチームを組み、約1年間活動する。別名「みんなの意見聴くンジャー」。自ら地域に出向き、住民とさまざまな活動に参加する中で、見過ごされがちな行政課題を掘り起こしていくのが最初のミッションとなる。

 吸い上げた課題を解決するため、会議や討論会などの場を通じてチームで議論を深める。最終的に目指すのは、若者の視点を生かした政策提案だ。県は4チームで計20人程度の隊員を任命したい考え。現在、農村や地域経済の活性化などにつながるテーマ、想定される活動とともに活動チームを公募中。5月中にも任命式を行う。

■県政参画を後押し

 2013年に県民参画基本条例を制定するなど県政への県民参画を推進する平井県政。近年も「パートナー県政推進会議」(13年)、「とっとり創生若者円卓会議」(14年)、「県民意識調査」(16年)など県民の声を施策の立案、見直しに反映する機会を創設している。

 「近年、地域課題に関心を持つ学生たちが増えている」(県民課)と分析しており、さらに若者の県政参画を後押しする全国的にも新しい仕組みを整えた。中西朱実県民課長は「声なき声を聴く新たな広聴。若者が地域に飛び込み耳を傾け、課題解決に向かっていく。地域を救い鳥取の未来を拓(ひら)く広聴レンジャーに挑戦してほしい」と活躍を期待している。