(10)気候変動で生成、分解


メタンハイドレートと地球環境

 この紙上セミナーでは、日本海の海底表層に分布する“燃える氷”メタンハイドレート(MH)を、主に新しい天然ガス資源の観点から紹介してきました。今回は、世界のMHの分布に目を向けてみましょう。

 世界地図=図=に記載された丸印は、調査によりMHが確認されたか、その存在が推定されている場所を示しています。MHは、全世界の大陸の縁に沿う海底の堆積層と、永久凍土地帯に広く分布していることが分かります。このような分布となるのは、MHが安定に存在できる温度と圧力の制約条件に加えて、MHを形成するメタンが陸起源の有機物から作られるためです。では、その総量はどれ位なのでしょうか。

 米国地質調査所の研究者の論文によれば、MHに含まれる炭素の質量は、1万ギガトンと推定されています(ギガは10の9乗)。この炭素量は、すでに利用されている形態(在来型)の天然ガス、石油および石炭に含まれる炭素の総量の2倍に相当します。もちろん、このうち資源として利用できるものは、濃集している一部にしか過ぎません。

 MHは、総量が膨大であることに加えて、在来型化石燃料と比較すると、浅い地層に分布しています。このために、気温の変化と、海水面の上昇と低下(水圧の増減)を伴う氷期・間氷期の気候変動により、敏感に生成、あるいは分解するものと考えられています。

 MHの生成と分解は、温暖化ガスであるメタンの固定、あるいは放出を伴うために、気候変動との相互作用に着目した研究も行われています。また、MHの分解により、海底の地滑りが発生する可能性も指摘されています。MHは、地球表層の主要な温暖化ガス貯留源としての役割も持っているのです。