
内視鏡や顕微鏡を駆使して行う脳腫瘍手術、開頭することなく治療を行う脳血管内手術…。医療技術の進歩は、新たな治療の可能性を切り開くとともに、より患者への負担が少ない低侵襲医療を実現した。鳥取大学医学部付属病院(米子市西町、北野博也病院長)の脳神経外科では、日々進化する技術に対応しながら、低侵襲医療を実践している。
「『地方で難しい手術は無理』という誤解を解きたい」と話す黒崎准教授
破裂すると、半数が亡くなるといわれるくも膜下出血を発症する脳動脈瘤(りゅう)。その治療法は、変わりつつある。開頭して金属のクリップで血管の膨らみを閉じる「開頭クリッピング術」に加え、1997年に脳血管内手術「コイル塞栓術」が登場。足の付け根から患部まで、動脈内にカテーテルという管を通し、動脈瘤に細く柔らかいプラチナの糸(コイル)を詰めて破裂を防ぐ、いわゆる「切らない治療」だ。
同科では昨年、最新の「ステント併用コイル塞栓術」を導入。金属の網目でできたステントを使うことで、これまで治療できなかった、入り口が広いタイプの動脈瘤も治療可能になった。「コイル塞栓術を第1の革命とすれば、ステントは第2の革命。今後の脳動脈瘤治療で、重要なポジションになると思います」。同科の坂本誠助教はそう展望する。
同科では、日本脳神経血管内治療学会指導医の資格を持つ坂本助教を中心に年間約100件の脳血管内手術を行うなど、中四国有数の実績がある。脳動脈瘤治療も国内では約7割が開頭クリッピング術だが、同科では脳血管内手術が6〜7割と多い。最大のメリットは、低侵襲であること。多くが1週間以内の入院ですみ、治療成績も良好という。
脳血管内手術について説明する坂本助教=鳥大医学部付属病院内の先端画像・低侵襲治療センター
同科が行う手術は、脳血管内手術を含め年間約300件。その中で「低侵襲」は、重要なキーワードとなっている。
例えば、脳下垂体腫瘍(しゅよう)はほぼ全例で、顕微鏡と内視鏡を併用した経鼻的手術を行っている。鼻孔から腫瘍を摘出する手術で、従来の方法に比べて術後の痛みや合併症が抑えられるという。手術件数は年間20例前後。その実績が評価され、脳神経外科医を対象とした日本間脳下垂体腫瘍学会の全国25カ所の手術見学実習施設の1つにも指定されている。
このほか、顔面けいれんや三叉(さんさ)神経痛に対し、手術によって痛みなどの症状を緩和する脳神経減圧術にも取り組んでいる。いわゆる「鍵穴手術」と呼ばれる、500円硬貨程度の小さな開頭で行う手術の一種だ。
同科では国内外での留学や研修に積極的にスタッフを送り出し、専門家育成を進めている。黒ア雅道准教授は「低侵襲医療が進んだ背景には機器の高度化もあるが、最も重要なのはそれを使う人間の技術。各分野のトップクラスの技術を学んでトレーニングを重ね、地域に還元することが重要です」と話す。
進化を続ける医療技術。黒ア准教授は「患者さんが元気になることが、医師の最大の喜び。山陰の患者さんが何不自由なく医療を受けていただける環境を提供したい」と力を込める。「最先端」といわれる技術を追求する理由は、そこにある。