【ネットオリジナル】続報・600キロ歩いて卒業式へ 隠岐島前高3年の村松さんがついにゴールへ

 3月1日に開かれる卒業式に出席するため、静岡県掛川市の実家から600キロの道のりで徒歩通学に挑戦していた島根県の隠岐島前高3年の村松新太さん(18)が27日、ついに隠岐にたどり着いた。予算なんと2万円、痛む足や睡魔、空腹と闘いながら高校を目指した23日間の挑戦を村松さんに振り返ってもらった。

無事に隠岐にたどり着いた村松さん(本人提供)

1日で60キロ歩くことも

 旅行や映像制作に興味があった村松さんは高校生活最後となる実家からの登校を控え、「せっかくなら歩いてみたら面白いのでは」と今回の挑戦を企画。2月4~27日の23日間、実家から隠岐行きフェリーが就航する境港市までの約600キロを走破した。

 旅の予算は2万円で、1日千円で生活。荷物は「歩いて卒業式へ」と書かれたビラを付けたリュック一つだけ。挑戦の様子はインスタグラムで随時発信してきた。

村松さんのインスタグラムアカウント

 実家をスタートし、愛知県を抜けて、琵琶湖のそばを通って大阪方面へ。兵庫県の南部を巡った後、姫路から国道29号を北上し、兵庫県内を縦断した。鳥取県入りしたのは21日午後3時ごろ。この日は鳥取市内まで1日で計60キロ歩いた。

 22~24日は県内を横断し、25、26日は松江市を旅した。27日に大根島から江島大橋(通称・ベタ踏み坂)を通って境港市に入り、無事にフェリー乗り場に到着。27日午後5時10分に隠岐へたどり着いた。

600キロを走破した村松さん(本人提供)

最初の1週間は地獄

 村松さんは23日間で一番つらかったのは、最初の1週間だと語る。軽い気持ちで挑戦を始めたが、その過酷さに何度も心が折れそうになった。

 愛知県内を移動中の3日目、「疲労骨折かな」と思うほど、足に痛みを感じた。引きずらないと歩けないほどで、近くの病院に駆け込んだ。「ここでやめよう」とも考えたが、骨折ではなかったため、挑戦を続行した。

 2週間目からは体も慣れてきた上、挑戦を知った知り合いから応援メッセージが届くようになった。道で出会った人からもビラを見て「頑張れ」と声を掛けられたり、差し入れをもらったりすることが増えた。

22日に鳥取駅前を通過した村松さん

 本紙が23日に村松さんの挑戦を報じると、応援がさらに増えた。まともな食事や睡眠が取れず、足の裏にはたこや霜焼けが残り「棒のようで自分の足じゃないみたい」とまで語ったが、応援の力でだんだんと体の痛みを感じなくなってきた。フェリーに乗る直前には「仲間に会えるのが楽しみ」という感情しか残っていなかった。

 予算は2万円だったが、本紙の報道後、差し入れが増え、友達の家に宿泊できたこともあり、終盤は1円も使わなかったという。「使ったのは1万3、4千円。皆さんのおかげです」と笑う。

 村松さんは「応援されるだけでなく、挑戦を見て逆に『元気をもらった』と言ってもらえることもあった。さまざまな出会いに感謝したい」と喜ぶ。

長旅を共にしたビラ

まだゴールしていない

 27日の夜には久しぶりに同級生らと再会。「よく頑張ったな」「すげえな」などとねぎらってもらった。挑戦中は孤独に感じることも多かったが、仲間に会えてようやくほっとした気持ちになれた。

 ただ、ゴールはあくまでも3月1日の卒業式。それまでは挑戦の途中だ。「無事に隠岐まで来られたことはうれしいが、まだゴールしていない。体調を整えて卒業式を笑顔で迎えたい」という。

「卒業式がゴール」と語る村松さん(本人提供)

 卒業後の夢は日本や世界を旅する映像クリエーター。「今回の挑戦で、いろいろなものを自分の目で見てみる大切さを身をもって感じた。これからもいろんな場所を旅して、深みのある作品を作ってみたい」と意気込みを語った。

 並大抵の努力、覚悟がなければ達成できない挑戦をクリアした村松さん。今後どのような活躍を見せてくれるのか楽しみだ。

(黒阪友哉)

この機能はプレミアム会員限定です。
クリップした記事でチェック!
あなただけのクリップした記事が作れます。
プレミアム会員に登録する ログインの方はこちら

関連記事

トップニュース

同じカテゴリーの記事