日本でも3、4社しかないという額縁用の座布団を製作する会社「マルタカ」(琴浦町出上)の社長、丸岡昂(たかし)さん(82)=琴浦町槻下=は、80代となった現在も現役で会社を切り盛りしている。全国的に需要は減ったものの、その丁寧な仕事が好まれ、月に千~1500組の額座布団を作り、県外の卸売会社に出荷する。配達に今も飛び回る日々で「90歳になっても働き続けるかな」と笑顔を見せる。
額座布団は三角形で、額受け金具と額縁の間に挟んで使う。額縁を傷から守るが多くは装飾が目的で、格調高くも見せる。同社では、底辺の長さ17センチから8・5センチのまで4種類の大きさを中心に注文を受ける。鳥取県内での注文は少ないが、毎年新調する家もあり、週に1回、奈良県の卸売業者に卸し、京阪神や北陸、東北などのホームセンターや雑貨店などで販売する。
丸岡社長は、30歳で会社を興し、婦人ブラウスの裁断や縫製、額縁の座布団製作を手がけた。昭和の終わりから平成の初めまでは、隆盛を極め、従業員7、8人と内職60人を抱え、多い月で1万組を製造した。
作業工程を、縫う、綿入れをする、ふさを付けるなど工場の流れのように細分化し、作業を依頼した。一時ほどの需要はなくなったものの、阪神淡路大震災では、つるされていた額が床に落ちてガラスなどが壊れる一方、日本式の額縁受けの額が落ちなかったことから、額座布団が見直された時期もあったという。
同社では、丸岡社長が布を裁断し、車を繰って材料などを運ぶ。米子市、琴浦、北栄町の12人が家庭で作業し、会社を支える。内職などで得た賃金で生活を送り、年金は孫や娘に会う時のために取っておくという話を聞いた時は、幾つになっても自立する姿に胸を打たれた。
好奇心もやる気も衰えない。80歳から日本舞踊も習い始めた。「仕事を辞めたいと思う時もあるが、“なにくそ”という気持ちでやっている」と胸を張り、今日もハンドルを握る。