この時期の釣り人同士の会話に「納竿(のうかん)はいつにする?」という言葉が飛び交う。あたかもそれが、古くから定められた行事のように、師走の忙しいなかを魚釣りにうつつをぬかす自分への呵責(かしゃく)の負担を軽減する便利な言葉として使ってきた。家人から見れば、義務でもあるまいし、そんな律儀さは自分たちに向けてほしいと不満が鬱積(うっせき)しているに違いない。
そんななか、個人で釣行するよりも釣りクラブの納竿大会に出かけるなら「クラブのために仕方がない」などと、一層罪悪感も軽減され、のびのびと釣りに出かけられる。この大会が月の半ばなら、その場で「本当の納竿はいつにする?」とくるから釣りバカたちは始末に悪い。
そんな理由で釣りクラブの納竿大会は大はやりだ。
▽親睦は既に十分
こんなことがあった。毎年行われるE名人率いるクラブの宇和島で行われた納竿大会に釣友3人と参加した。親睦もこの大会の目的の一つ、と「是非、交流を深めて下さい」とのあいさつがあり、渡礁順の抽選があった。
大阪から同行の1人、Nさんに「何番?」と聞くと「ええ番号引きましたわ。3番です」。「それやったら同じ磯や!」。知り合い同士が同礁すると、普通は「良かった」という反応が当たり前。だが、いやーな予感という表情がアリアリ浮かんでいる。その過剰な落胆は「これ以上親睦も交流も深める必要はまったくない。十分過ぎるぐらい」と顔に書いてあった。
Nさんの吉兆の予感はあまり当たった記憶がないが、不吉(不漁)な予感はよく当たる。この季節になると、必ずNさんの顔が浮かぶ。
▽釣りの過労死
世の中は、広い。そんなことや世間の師走の慌ただしさなどもまったく意に介していない漁師のような釣り好きもいる。私が私淑している大名人のM氏は、釣りが仕事のような人であるが、それとても体力的な問題もあるであろうし、よくあれほど釣りに行って飽きないなぁと思えるほどの釣行回数だ。
例えば、日曜日に磯釣りに串本に行った。せっかく串本まで出かけたのだから、次の日の月曜はカセ釣りでタイ釣りに。火曜日は釣り仲間の忘年会に出席して、その道中で「大森さん、明日ガシラ釣りに行きませんか?」ときたから恐ろしい。釣りは遊びの中でも体力がいる。その上、このクラスの名人になると、どの釣りをしても最後の最後まで大変な集中力を維持しながら釣り続ける。度々このようなスケジュールを見聞きする私は、「Mさん、釣りが原因の過労死の可能性が十分ありますよ」と申し上げても超然の構え。
とにかく、平均的な釣り人は、事故なく、食卓のアクセントになる程度の釣果があり、家人にも良い趣味を持ったと喜ばれるような釣り師が一番。今年一年、無事に釣りを楽しめたことを感謝しつつ、来年の読者の釣運を心からお祈りする。
週末のイチオシ気配
■船(1)■明石・兵庫
ショウサイフグ好調。連日、同魚20~40センチ15~30尾が竿頭。別船でタチウオ75~120センチ40~50尾程度が竿頭。要予約。▽名田屋乗合船=電話078(912)7211
■船(2)■加太・和歌山
カワハギ専門便堅調。田倉崎沖に出て同魚20~35センチ20~60尾程度の安定した釣果が出ている。要予約。▽三邦丸=電話050(3532)9619
■船(3)■小島・和歌山
淡路沖のタチウオ上向くはず。20日、同魚75~115センチが25尾。サイズよくなっている。要予約。▽恵比寿丸=電話080(1423)6825
■船(4)■牟岐・徳島
出羽島沖に出てイシガキダイ25~45センチ10~20尾の安定した釣果。オモリ40号、エサはウニ、マムシ。要予約。▽第八光政丸=電話0884(72)1798
■磯(1)■梶賀・三重
連日40センチ超あがり一発大物の期待ができる。神須ノ鼻で大物気配ムンムン。「バラシ多いのでワンランク太いハリスを」と船長。▽榎本渡船=電話0597(27)2211
■磯(2)■江須崎・和歌山
グレ上昇気配。一の島、ソビエト、ハッカイ、ヨボシでグレ30~40センチ3~8尾。他に海藻系のエサでイガミ25~40センチ1~4尾。▽橋本渡船=電話0739(58)0301
■筏■堂の浦・徳島
湾口のカセでチヌ好調。同魚25~50センチ5~10尾。エサはシラサエビ、オキアミ。別筏でカレイ25~35センチ1~3尾程度見込める。▽斉藤渡船=電話090(3782)0837
■波止■武庫川一文字・兵庫
アナゴが狙い目。25~40センチが主体で、10~20尾の釣果。アナゴが釣れる場所が偏っているので、探ってから釣り座を固定する。▽武庫川渡船=電話06(6430)6519
■投げ■岸和田一文字・大阪
今年はカレイ第一波の接岸遅いが、今週末から一気に上昇するはず。20~30センチ5~10尾確実。エサは青イソメ。▽岸和田渡船=電話0724(36)3949
■ワカサギ■余呉湖・滋賀
急上昇気配。現在、江土桟橋で6~10センチがいい人で350尾程度であるが、水温が現在9度で適温まであと少し。年末年始休みなし。▽余呉湖漁協=電話0749(86)3033
■管理釣り場■水無瀬川尺代・大阪
15センチ前後のアマゴがいい人で15~20尾。14番あたり有望。ハリス0.3号、アマゴ針5~6号。エサは生イクラ。▽漁協事務所=電話075(961)65