OSK日本歌劇団は舞台「近松TRIBUTE」を大阪市阿倍野区の近鉄アート館で上演した。浄瑠璃・歌舞伎作家、近松門左衛門が「芸術は虚構と事実の微妙な接点にある」とする芸術論「虚実皮膜(きょじつひにく)」の境地に至る姿を描いた。
時は江戸時代中期の大阪・道頓堀。近松(桐生麻耶)は竹本義太夫(登堂結斗)とともに「曽根崎心中」や名妓(めいぎ)・夕霧太夫(朝香櫻子)を題材にした作品を大ヒットさせ売れっ子に。創作のヒントは、遊郭の女将(おかみ)おえん(城月れい)から聞く市井の事件や恋愛話だ。
その遊郭の遊女梅川(唯城ありす)は飛脚問屋の養子忠兵衛(華月奏)と恋仲だが、当時流行を見せ始めた麻疹に感染した疑いで幽閉される。梅川を救うべく忠兵衛は客の金に手を出し…。
作・演出の北林佐和子は三代目中村扇雀の監修を得て、「冥途の飛脚」など近松作品をモチーフに、近松が創作の使命を悟る様子を歌や踊りを交えて表現。三面舞台を生かし、文字も含めた映像投影やコロスの群舞などで近松作品の世界観や近松の心情に迫った。
ミニレビューショーもあり、OSK100年の歩みをたどる映像も投映。濃厚な芝居作品で、創立100周年の掉尾(とうび)を飾った。公演DVD、ブルーレイの販売あり。