日本はいまだ鎖国状態か?

お寒い外国語事情に唖然

金井啓子の伴走で伴奏

 友人女性が日本の語学事情をボヤいていた。彼女は日本国籍を持つが海外で生まれ育ち、英語とフランス語しか話せない。その彼女が日本に“留学”し東京で生活することになった。

 まずは部屋を借り、銀行で口座を開かねばならない。そこでネットで住宅情報を調べ「外国人歓迎」「英語で問い合わせ可」と書いている業者に英語でメールを送ったがなしのつぶて。しばらく待って、日本語が書ける知人に書いてもらったメールを送ると、すぐに返事が来たという。このような業者が数件あったそうだ

 同じことは銀行でもあった。銀行口座を開くため、大手銀行の大きめな支店に足を運んだ。ここなら英語が通じると思ったからだ。ところが支店には大勢の銀行員がいるのに英語が全く通じず、同行した知人に通訳してもらった。彼女以外にも、ポルトガル語と思われる言葉を話す客もいたようで、こちらも銀行員とのコミュニケーションは成立せず、諦めて支店から出ていったそうだ。

 さらに、スポーツジムに入会しようとしたところ、複数のジムで「日本語が話せない」ことを理由に入会を断られたという。念のため日本語が話せる知人にも理由を再確認してもらったところ、「緊急事態の時に日本語がわからないと困るから」と説明されたそうだ。

 いまはコロナの影響で海外からの訪問客は激減したとはいえ、数年前までは大阪の繁華街では外国人観光客があふれていた。インバウンドで利益を上げた土産物屋もあっただろう。

 ただ、各店もインバウンド効果に期待している割には英語などの会話能力には乏しいようである。別の友人が目撃した話によると、うどん屋に入ったアジア系の客が店員に英語で話しかけても会話は不能。英文のメニューすらなかったという。そのうどん屋は大阪市内の大きな商店街にあり、そこでは「海外客歓迎」の看板を掲げていたそうだ。

 いずれコロナも終息するだろう。そのとき海外からの訪問客が戻ってくるに違いない。しかし、彼らを迎え入れるなら最低限のコミュニケーション能力は備えたいものだ。

 また、日本で働こうとする外国人も増えるだろう。ネットで「英語で問い合わせ可」と書きながら、連絡に応じない業者がいては日本への不信感が増すだけである。人口が減り外国人労働者の手を借りないわけにはいかない日本が「冷たい国だ」と思われることは避けたいものである。

 (近畿大学総合社会学部教授)

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