コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻、原材料高と中小企業にとって厳しい経済状況が続いている。2023年の中小企業の状況について、りそな総研の荒木秀之主席研究員に聞いた。今回は世界景気の停滞と物価高が続く今年の中小企業の経営環境を、次回19日には中小企業の海外展開の条件を紹介する。
-23年度の経営環境は。
「低成長の可能性が高い。大きな理由は世界景気の停滞、インフレ・コスト上昇の継続の二つ。中小企業はコストアップに苦しむ中で価格転嫁がうまくいっていない。すでに収益が厳しいが来年度も続く可能性がある」
-中国については。
「ゼロコロナを解除しても足元の感染爆発にみられるように、低成長を余儀なくされる可能性が高い。感染が増えること自体の社会の混乱が読めないので厳しく見ざるを得ない。米国からの半導体規制の話もある。欧米が厳しい中で牽引(けんいん)役が不在になる。中国がおかしくなるとアジア全体が沈み、受注環境に跳ね返ってくる可能性が高い」
-為替相場は。
「日本の金融政策以上にアメリカの金融政策が左右する。根本的には日米金利差。足元はアメリカの利上げベースが減速し、春先以降は利上げ打ち止めという見方が大半を占めることを背景にした、円高の流れ。裏を返すと本当に春先以降利上げしなくていいのかが鍵。資源相場やウクライナ情勢、脱炭素、脱ロシアの動きも続いている。再度資源相場が上がり出せば、アメリカの物価も上がり始め、再利上げという可能性がある。そうなると円安傾向に戻る」
-消費への影響は。
「ばらつきが出やすい。観光関係に関してはインバウンドの牽引と政策効果もあって好調になりやすい。一方で消費のベースは弱くなる。衣食住に節約志向が働きながら観光関係は好調という、またさきのような形が続く」