ぜん

「青唐辛子みそ」製造販売 思い出の味を世界の食卓へ ご当地みそとコラボも

あきない見聞録

 2010年から青唐辛子を使ったみそ加工品「ぜんの辛んま 青唐辛子みそ」を製造し販売を開始。そして25年までに日本各地で生産されるみその特色を生かしつつ、青唐辛子を加えた独自の配合で作る「ご当地青唐辛子みそ」の商品化を目指している。その第1弾として昨年11月16日、兵庫奥播州の多可町にある足立醸造のみそとコラボレーションした「ぜんの辛んま 青唐辛子みそ」(足立醸造版)を発売した。

 代表の金光哲(あきら)さん(59)は若い頃に信州のスキー場で働き、「風景、空気などその地域に魅了された」と大阪から移住。移住先の友人宅で食べた「コショウみそ」の味が忘れられなかったという。現地では唐辛子のことをコショウと言い、「からいのが苦手だったが“なんじゃこりゃ”というぐらいしばらくしたらまた食べたくなった」と、商品の基礎となった味との出合いを振り返る。

 商品化に向けては韓国や大阪の唐辛子を使って試作を積み重ね、「みそもいろいろ試した」。ただ、思い出の味が変わると「販売する理由がない」と妥協はなかった。試行錯誤を繰り返す中で、移住先から取り寄せた唐辛子を使うことでようやく納得の味に仕上がった。

 そして今、取り組みを進めているのがご当地みそとのコラボ商品。金光さんは「日本の地域ごとの特色あるご当地みそメーカーと連携して商品化を進めていきたい」と意気込む。「万博に向けて、海外の人に日本古来の食文化を知ってもらいたい」とも。いくつかの試作品もできているようで第2弾が発売される日も近い。

 21年8月には「ぜんの辛んま 青唐辛子みそ」ちりめんじゃこ入りが大阪産(もん)に認定。「青唐辛子みそを世界の食卓へ!」をビジョンに掲げ、「みそはチーズに負けない」と世界に販路を求める。6年前にはフランスに輸出し、セレクトショップなどでの取り扱いがある。

 金光さんは高校卒業後に事務機器メーカーの修理部門で働き、「原発のメンテナンスの仕事もやっていた」と異業種から食品製造の世界に飛び込んだ。24歳の時に北アメリカを2カ月放浪した経験も背中を押した。金光さんがほぼ一人で造ったという「うまいもん工房 ぜん」では一日最大で約300ほど製造できるが、今後は「規模を大きくしていきたい」という。

 社名の「ぜん」は「若いころに迷いの中で生きてきて、生きる目的を自問自答していた時」に出合った言葉。今は“前”進の「ぜん」だ。「自分の作った商品を取り扱ってもらうようになるとは夢にも思わなかった。本能のまま生きてきて、たどりついたというのが正直なところ」と、思い出の味で世界の食卓を見つめている。

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